第4話 アニメ化するなら私はピンク髪がいい④~誤変換と誕プレ~

「もしもアニメ化するんなら、私はピンク髪がいい」



 スマホの画面にポップアップされた、レゴからのメッセージを見て、ホリーはすぐさま無視することに決めた。


 ちょうど勉強にもきて、マンガを二三冊読もうかなどと思っていたところで、ひまと言われれば暇なのだが、だからといって、暇つぶしならば何でもいいわけではない。


 どのマンガを読もうかと、スマホをスクロールしていると、再び、レゴからのメッセージがポップアップしてきた。



「テス勉中?」


「いや、普通に無視した」


「無視すんなし!」


「無視されるようなこと書くな」


「えー、だって、後で話そうって言ったじゃん」


承諾しょうだくしてない」


「いいじゃん。どうせ、休憩中だったんでしょ?」


「何で?」


「だって、ホリーは集中しているといっさい返信しないし」


「じゃ、集中するから、返信しない」


団子咀嚼だんごそしゃくする!」


「は?」


「間違えた。断固阻止だんこそしする!」


「おもしれぇ、誤変換ごへんかんしてんじゃねぇよ」


「この前、エマと一晩中ひとばんじゅう団子トークしてたからだな」


「一晩中語れる団子トークって何だよ。団子おいしかったね、以外思いつかねぇよ」


「団子への愛が足りないな」


「いや、足りないとかじゃなくてそもそもぇよ。そんなのミジンコも無ぇから」


「ん? 今のは、微塵みじんもない、を、ミジンコもないって誤変換したの?」


「……」


「というより、私の誤変換がおもしろかったから、対抗して何かおもしろ誤変換をしようと思ったけど、いざやろうとしたら恥ずかしくなって、一応いちおう意味が通るところでやっておいて、流されたら流されたでいいし、ひろわれても、こういう表現だけど、って逃げられるようにした保険をかけたボケ?」


「解説すんじゃねぇよ! 恥ずかしいだろ!」


「スクショしますた」


「おまっ! ふざけんな! 消せ!」


「ふふふ、ホリーってかわいいとこあるよねー」


「お願いだから消してくれ」


「エマに送っとくね」


「拡散すんな!」


いちごオーレ」


「……明日おごるから」


「わーい! やったー!」


「不覚……」


「まぁ、エマには送っちゃったけどね」


「じゃ、無しだよ! どんだけ悪党なんだよ。昨今さっこんわるキャラでも約束くらい守るぞ!」


「まぁまぁ。エマだし、いいじゃん、アホだし」


「まぁ、エマならいいけど、アホだし」


「ていうか、グループチャットの方に書き込めよ。そしたら、エマも見れるし、あたし以外の誰かがレスしてくれんだろ」


「いや、さすがに迷惑でしょ。テスト期間中だし」


「あたしはいいのかよ」


「何だろう。ホリーなら、両立できるかなって。テス勉と私を」


「できるできないじゃなくてしたくないんだが」


「まぁ、さっきからエマともずっとチャットしてんだけどね」


「じゃ、意味ねぇじゃん。何だよ、さっきの気遣いは」


「マジレスすると、バスケ部のグループは、みんなまじめだから気が引けて、クラスのグループは、トロ子の誕プレを何にするかで白熱してるから、入りづらい」


「まぁ、バスケ部の方は、あんまTL汚すなみたいなかんじあるもんな。ていうか、クラスの方、何やってんの? あたし、クラス違うから空気わかんないけど」


「今、トロ子の誕プレを、マグロにするか土器どきにするかでもめてる」


「何? その二択? あたま大丈夫?」


「トロつながりで」


「いや、知らんけど。トロ子と土器はどうつながんの?」


登呂遺跡とろいせきから採掘さいくつしてくるって」


「だめだろ。盗掘とうくつじゃん。てか、どういう発想すればそうなるんだよ。絶対、男子が悪ノリしてんだろ」


「このグループ、女子オンリー」


「狂ってんな」


「今んとこ、土器優勢かな」


「優勢なのか」


「やっぱり文化的価値が高いからね」


「誕プレの話してんだよな?」


「あ、でも、今、マグロの解体ショーをするって話が出て、半々くらいになったかも」


「マグロって一頭なの!?」


「マグロは一本って数えるんだよ」


「いや、今はどうでもいいよ、その豆知識」


「先生が張り切っちゃって」


「先生もグループ入ってんの!?」


「練習するって」


「先生が解体すんの!?」


「私もマグロがいいなぁ。やっぱり花より団子だよね」


「うるさいよ。ここで思い出したように団子ネタを引っ張ってこられても、他の内容が濃過こすぎて入ってこねぇんだよ」


「誕プレ考えるのも一苦労だよ」


「ん? でもクラスのグループだったら、トロ子も入ってるんじゃないの?」


「あ、だから、昨日からトロ子はグループ締め出されてる」


「いじめじゃん」


「トロ子から電話かかって来たもん。私何かしたかな? って。泣いてたな」


「かわいそうだろ、やめてやれよ」


「誕プレのためなんだよ。わかんないけど」


「あたしの誕プレと定義が違い過ぎるな。まぁ、トロ子のためにやっているというのが救いなのか」


「ね?」


「何が?」


「話題振りづらいでしょ?」


「あー、だな。おまえの、めちゃくちゃ緩い話題なんて入り込む余地がないくらいの激戦地帯だもんな」


「そ、だから、あたしの相手は、ホリーがするしかないんだよ」


「何が、だから、なのかわからんが」


末永すえながく」


「お琴割ことわりします」


「その間違い方はあざといと思うけど、ホリーが、あ、ここでいけそうって思いついてウキウキと変換しているところを想像するとえるからありかな。とりあえずスクショしたった。ごちそうさま」


「……見逃して」

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