その願いはあまりにせつなく、けれど彼は叶えることをやめられない

中華をモチーフにした世界で繰り広げられる、とにかく格好いいバトルと人間模様の絡み合うファンタジー作品。

人の強い願いが作り出す「匣庭」では、その願いが常に叶えられる。そしてその世界に紛れ込むのは生者だけでなく死者も……。
そんな匣庭を壊すことを目的とした夜色の女、一(にのまえ)蓮安。彼女は勾欄(劇場)を営むシロという蜂蜜色の髪をした青年に開口一番「ここで匣庭が発生している」と告げ――。

まず何と言ってもバトル時の呪文が超絶格好いいです!
カタカナの羅列じゃなく、呪文もしっかり中華風。短い呪文なんだけど、そこに属性とか、どんな攻撃とかが分かるようにしっかり考えられてるところが凄い。
この作者様にして格好いいバトル描写あり!といっても過言ではないので、ぜひ美しい蓮安が華麗に戦っている姿を脳裏に焼き付けて欲しいです。映像浮かぶから!

物語は後半に行くほど蓮安とシロ君の関係性が変わってきて、切なさに胸が軋むほど。
お互いのことを大事に思っているはずなのに、互いの願いが重なり合わなくて……読んでいると、どちらの思いも分かってただただ切ない。

重厚なストーリー展開。流れるように美しいバトル描写。独特で完成された世界観。
そこに息づく魅力的なキャラクターも多く、「願い」を軸にそれぞれの思いが交差されていく。

読んでいく内に明かされていく真実。そこから導き出される未来が、多分この物語のキャッチコピーに現れているんだろうなと思います。

これは時間のあるときに読むのをお勧めします。どっぷりと深灰の世界に浸れること間違いなし。

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