恥ずかしながら私はブロマンスという言葉をこの作品で知った。
知らない人のために念のため引用しておくと
ブロマンスとは”2人もしくはそれ以上の人数の男性同士の近しい関係のこと。性的な関わりはないものの、ホモソーシャルな親密さの一種とされる”(wikipediaより)
意味を知ってこの物語を読むと確かに完全無欠のブロマンスである。
ただ、私のようにブロマンスを知らなかった者でも心の底から楽しめる物語であった。
もしかしたらいや間違いなく、ブロマンスの意味を知って敬遠してしまうような人でも
楽しめると私は太鼓判を押したい。
物語の根幹としてブロマンスの要素はあるが、
シンプルにストーリーが面白いのだ。私は読む手が止まらなかった。
そして、そのストーリーを際立たせるのが、流麗な文章だ。
美しい語彙と読みやすさが両立され、豊かな感情と情景がひしひしと伝わってくる。
なおかつテンポが良く無駄が無い。なんということだ、完璧すぎる。
どんなストーリーかはあえて言及しない。私が語るよりも読んでもらったほうが良い。
ああ、良い物を読ませていただいた。
ぜひ、貴方も堪能してもらいたい。
カリスマも力もある国王ヴィクトールが崩御。
その王に「神の料理人」としての才能を見出された主人公のルネ。
優しさ故に父王に疎まれ続けたが、血筋故に王位を継がねばならなくなった王子エティエンヌ。
乱れた国の秩序を取り戻すため、王都奪還の戦いへと二人は身を投じます。
冒頭からのお料理シーンでもわかるのですが。実に美味しそうな描写が続きます。
文脈から料理の匂いが漂ってきます。本作の魅力と特徴の一つです。
そして王都奪還の戦いの中で、育まれるルネと王子エティエンヌの絆、二人が縛られし過去から己の心を解き放つ過程も、成長物語として楽しむことができます。
スピーディーな文章運びで読みやすく、キャラの心情に寄り添った描写が素敵な作品です。
ブロマンス物が好きな自分としては、おすすめのお話です。ぜひ一読を。
このお話は神の料理人ルネと、奪われた王都を奪還すべく立ち向かう王子エティエンヌの物語です。
まず神の料理人とはなんぞや?と思われることでしょう。
マナにあふれた食材を調理すれば、魔法の力を宿す料理が作れる。その料理を作れる者のことを神の料理人と呼びます。
王子エティエンヌはそんなルネの力を欲し、魔法の力を得ることで王都を奪い返そうと試みます。
物語の前半はルネの様々な料理の魔法で奪われた領地を奪還していくエピソードに加え、エティエンヌという人物の掘り下げにもスポットが当てられます。
父であり前王でもあるヴィクトールの呪縛に捕らわれているエティエンヌ。
ヴィクトールの元で「神の料理人」として、また友としてそばにあったルネ。
この二人が料理を食べるたびに、少しずつ……本当に少しずつですが関係が変わっていく。
そして物語の後半になると、読者の手を止めない展開が訪れます。
きっとあなたも私と同じように叫び、愕然とし、泣き、そして感動するはず。
ぜひともこの後半……王都に辿り着いてからのルネとエティエンヌの二人を最後まで見届けてほしいです。
絡み合う呪縛と因縁、故人の王に対するわだかまりや、それでも尚、恋い慕う想いが切なく胸に刺さります。
光あるところには影があるのと同じように、偉大なる王にも、冷酷な面があることを知ってしまい、逃げてしまった料理人。
父王に冷遇され、民にも侮られ、本来の実力を発揮できないまま育ってしまった王子。
そんな王子の真の姿を知っているからこそ、付き従い続ける従者——
た ま ら な い !!
同姓同士の関係性オタクには美味しすぎるお話でした。
料理魔法という斬新なアイデアと、男同士の激重感情が見事に調理され、読んでいて本当に美味しいお話に仕上がっているなぁ、本当に美味しいなぁ…美味しい…と思わせてくれるお話です。
作中に出てくるファンタジー飯も、空腹時に読んだらもれなく胃袋が刺激されてしまう描写が素敵。
料理人ルネと王子エティテンヌの関係が徐々に変わっていくところや、その間に故人の王が挟まっている感じが……いい。
いい……としか言えない。
途中、ドキドキハラハラする箇所もありますが「ハッピーエンド」タグを信じてお読みください。
読後は清々しく幸せと希望と空腹に満ちた気持ちを味わうことができるはずですから。
「神の料理人」とは、力を持つ幻獣や神聖植物を調理し、食べたものに魔法の力を授けることのできる存在です。
神の料理人、ルネはその腕を奮って前王に仕えていましたが、とある事情で霊山にこもり隠居生活を送っていました。
そこに現れたのが、前王の末息子エティエンヌです。
彼は前王亡き後、内乱で荒れた国を治めるため、ルネの料理から得られる「魔法」の力を欲していました。脅されるようにしてエティエンヌに協力するようになったルネ。
初めは反発するものの、エティエンヌを取り巻く環境や彼の過去、さらには親友だった前王が遺した爪痕を知る内にエティエンヌを認め、互いに唯一無二の存在へと変わっていきます。
神の料理人の設定がまずとても面白いです。彼が作る料理はどれも不思議で美しく、思わず食べてみたくなってしまいます。
「銀華芋」「火蜥蜴」「コカトリス」材料となる幻獣や神聖植物の設定もファンタジーらしいワクワクが詰まっており、そこからどんな魔法の力が得られるのかを想像するのもとても楽しいです!
そして何よりも、物語を追うごとに変化していく二人の関係性が非常に良いのです。
ルネの視点を通して読者は物語を追っていくのですが、エティエンヌの印象が初登場時からガラリと変わっていくことに驚くはずです。
父である前王の影を追うばかりで頼りにならず、王としての素質などない。と思わせておいて、明らかになっていく彼の背景の悲しさと苦しさ、そして前王の呪縛から解放され「王」となっていく姿に心を打たれます。
親友でもあった前王の息子でしかなかったエティエンヌが、仕えるべき王、そしてかけがえのない「友」となっていく。
その様子にはきっと胸が熱くなることでしょう。
ちなみに、エティエンヌと彼に長年仕えていた従者、ジャックとの主従関係もとても良いので、是非注目してみてください。
果たして二人は前王の呪縛を打ち砕き、国をまとめることができるのか。
料理も関係性もとても「美味しい」物語です。
完結しております。是非ご一読ください!
幻獣を食材に料理を作れば、食した者を魔法使いにする神の料理人ルネ。
亡き王に仕えたルネを訪ね、自らの「王冠」として召し抱える王子エティエンヌ。
二人は魔法料理を食べ戦局を有利に進めていくのだが、極限状態の戦争の中、それぞれの関係性を見つめ直していく。
女性の趣向が強いブロマンス物語ですが、「幻獣料理」「戦略戦術」「立身出世」といった、男の子が好きそうな要素もたっぷり詰めこまれています。
事実男性の私も続きが気になり、3章終わりまで読み進めてしまいました。
それも丁寧な描写、考え抜かれた時代背景、世界観はもちろんのこと、主役二人の関係性に魅了されたから。
ブロマンス! その一言に尽きる二人の関係性は、土台をきっちり整えればこうも万人を惹きつけるストーリーに仕上がるのか。
それもそのはず。人間関係の機微を描く事は、どんなジャンルの小説でも大事な事。
是非本作を読んで、その筆致に酔いしれてみてはいかがでしょうか。
【第9回カクヨムWeb小説コンテスト】応募作です。
「神の料理人」と称される天才料理人ルネは、とある理由で出奔し死を偽装した。
ヴィクトール王に、魔力の源であるマナを含む食材からマナを取り出せる腕を買われ、厚遇されていた。
しかしそれが本当に正しいことだったのか。ルネは迷ってしまいます。
そうして山で死を偽装したのだが、エティエンヌ現王の追っ手に捕まってしまい、彼のために「神の料理人」としての腕を振るうよう強要された。
前王を見限って隠遁生活を行っていたものの、現王のことがよくわからない。
エティエンヌの謎に触れるとき、ルネはどう行動することになるのか。
食事をおいしく描くことに長けた著者様ならではの文章は、空腹時に読めば飯テロ間違いなしです。
お昼ごはんを食べながら、読んでみてはいかがでしょうか。