親友の息子から無二の存在へ。関係性の変化が熱く「美味しい」ブロマンス!

「神の料理人」とは、力を持つ幻獣や神聖植物を調理し、食べたものに魔法の力を授けることのできる存在です。
神の料理人、ルネはその腕を奮って前王に仕えていましたが、とある事情で霊山にこもり隠居生活を送っていました。
そこに現れたのが、前王の末息子エティエンヌです。

彼は前王亡き後、内乱で荒れた国を治めるため、ルネの料理から得られる「魔法」の力を欲していました。脅されるようにしてエティエンヌに協力するようになったルネ。
初めは反発するものの、エティエンヌを取り巻く環境や彼の過去、さらには親友だった前王が遺した爪痕を知る内にエティエンヌを認め、互いに唯一無二の存在へと変わっていきます。


神の料理人の設定がまずとても面白いです。彼が作る料理はどれも不思議で美しく、思わず食べてみたくなってしまいます。
「銀華芋」「火蜥蜴」「コカトリス」材料となる幻獣や神聖植物の設定もファンタジーらしいワクワクが詰まっており、そこからどんな魔法の力が得られるのかを想像するのもとても楽しいです!

そして何よりも、物語を追うごとに変化していく二人の関係性が非常に良いのです。

ルネの視点を通して読者は物語を追っていくのですが、エティエンヌの印象が初登場時からガラリと変わっていくことに驚くはずです。
父である前王の影を追うばかりで頼りにならず、王としての素質などない。と思わせておいて、明らかになっていく彼の背景の悲しさと苦しさ、そして前王の呪縛から解放され「王」となっていく姿に心を打たれます。

親友でもあった前王の息子でしかなかったエティエンヌが、仕えるべき王、そしてかけがえのない「友」となっていく。
その様子にはきっと胸が熱くなることでしょう。

ちなみに、エティエンヌと彼に長年仕えていた従者、ジャックとの主従関係もとても良いので、是非注目してみてください。

果たして二人は前王の呪縛を打ち砕き、国をまとめることができるのか。

料理も関係性もとても「美味しい」物語です。
完結しております。是非ご一読ください!

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