奈良にある江戸時代以降に建てられた古民家の立ち並ぶ地域、通称ならまち。そのならまちに事務所を構えているのが、妖専門のよろず相談所です。
ここは人の世に生きる妖たちの困りごとを解決する何でも屋。
そこで働いているのが、夏樹と冬樺のコンビです。明るく行動派な夏樹とある過去から人付き合いを避けている慎重派な冬樺は、協力したり時にはケンカしたりしながら、所長の下で仕事に励みます。
こちらの物語に登場するのは、妖の困りごとを解決するよろず相談所。登場する妖たちは人の世に紛れ、人間同様仕事をしたり学校に通ったりして過ごしています。
また、人ではなく動物の姿をしている妖であったり、人に紛れずに妖らしく生きる者たちも登場します。可愛らしかったり恐ろしかったり、妖たちの多様な世界に魅了されること間違いなしです。
また、作中では古都奈良の景色やグルメが多く登場します。綿密に描写された情景は、作中に生きるキャラクターたちをよりリアルな存在として読者に感じさせてくれます。
何より、物語を通じて主人公たち夏樹と冬樺の成長が感じられるところも、作品の魅力です。どこか影のある冬樺はもちろんのこと、夏樹の過去にもある秘密が存在します。悩みながらも互いに励ましあって、周囲の大人たちに見守られながら過去を乗り越えて成長していく姿は一見の価値ありです。
古都奈良の景色と共に、少年たちの成長と多彩な妖たちの世界を覗いてみませんか。
人と共存することを選んだ妖。
しかしその感覚の違いから悩むこともある。
そんな彼らを助けるのが、妖よろず相談所。
そんな妖よろず相談所に、新しく所員に加わったのが冬樺。
明るい夏樹と、人との交流を避ける冬樺。
人間である二人は、それぞれ理由があって、その妖よろず相談所に身を置いている。
「信じて裏切られたら悲しいけど、最初から信用できひんっていうのも、切ないなあ」
「害にしかならない存在、というのがいるんです。正しくは、害を及ぼすために作られた命が」
そんな二人が依頼中に出会ったのは、かまいたちのカマ吉。
「ワレ、ナメとんか?! これで痛い目合わすど」
口は悪いが、霊力の色で悪人かわかるカマ吉。
人と妖が住む古都奈良。話がわかるものもいれば、退治しなければ守れないこともある。
そしてその狭間の中で生きるものは、どちらにも属し、どちらにも属せない。価値観の違う議論には結論がない。そんな中で、彼らはどう生きるのか。