第13話

立派な門構えから、玄関の扉まで、

100メートルはあったと思う。


中に入ると使用人みたいなひとがいて、

奥へと通された。


そこで、西園寺さんのお父さんに挨拶したのだが、緊張でどもりまくった。

「か、彼氏の、山吹です...」


現状、貧乏人ゆえ。

「二度と娘に近づくな」と言われるかと思ったが、杞憂だった。

「娘をよろしく頼む」と頭を下げられた。



あとで、西園寺さんに聞いたら、


「遡るとね、うちの家系はお金に凄い苦労したみたいなの。今では成功して大きな財閥になって、こんな家に住めているんだけど。

始まりは、ちっぽけなボロい、ビルの一角から会社を起こしたって話を聞いてるわ...

もう亡くなったおじいちゃんの更におじいちゃんの代から始まってるんだけど、

もともとお金があったわけじゃなくて、、」


「だから、お父さんも貧乏なこと、

けして、バカにしたりしないから、安心して」


「わ、わかった...」


絨毯の引かれた廊下を

まだ、ドキドキしていた。

足の震えは少し収まったが、まだ

うまく歩けないでいた。

それから、

俺はボロアパートまで送ってもらうことになるのだが、

仕事を無くし、打ちひしがれたていた

父親に朗報を届けることができた。


先ずひとつ。

俺に奇跡的にお嬢様の彼女ができたこと。


そして、ふたつ目。

就職先が決まったこと。

つまり、

あの、西園寺グループで、父さんが

再就職を果たしたこと。




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