第9話 妙なパネルが出てきだが、俺の転生者としてのポテンシャルはまだ分からない。

「なんだ?それは?」

「え?コレですか?」



シーナは人差し指でパネルをパチパチと触っている。とは言ってもこれは擬態語であって擬音語ではなく、要するにパチパチなんて音はどこからも聞こえていない。


シーナがこっちを向いてニコニコしながら、強いクマをまぐれで倒して手に入れたらしいオープンフィンガーグローブから突如出現したパネルを指先でスベスベしているだけだ。




「これが、このグローブの強さ?なのか?」

「はい。あと、私の今の状態とかも分かります!」


それってRPGじゃねーかよ!

「異世界じゃなくて、VRモノか??」と思ってみたくもなるが、今は2020年。

異世界どころか現実と見間違えるVRなんてあるはずがない。


まぁそんなリアルなVRゲームがあったとしても、中学の頃にどハマりした剣士無双アニメが未だに大好きで、フルダイブVRMMOの登場を待ちわびている俺が知らないはずもないだろう。


色々考えを巡らせても、ここがVR空間だとは到底思えない。


割と現代的な異世界なんだろう。ここは。

中世ヨーロッパ風の街並みが広がっている訳でもないし、馬車も無い。



とりあえずVR説は置いておいて、肝心なのはステータス。

異世界転生モノといえば、俺TUEEEEで無双&ハーレムというのが鉄板。王道とは呼べない設定の作品でも、転生者なら何か特殊な力くらいは持っているはずである。




「その、ステータスは、どうやって見るんだ?」

パーカーを腕まくりしながら俺はシーナに尋ねた。


「アイテムです。たぶん街のお店に売っていると思います。」



「値段は??初期金額で買えるか??てかこれ初期装備とかない系だよなー。だとしたら、特殊能力系か?タイムリープ?絶対遵守?いや、この初期装備の貧弱さとか相方の弱さとか、もしかして最近流行ってきてる田舎でスローライフ系なのか??見たことねーし、どうやったらいいのか全然わかんねー!こちとら東京生まれ東京育ちのシティーボーイだぞ?少しは俺に優しくしろよ神様!」



「あの、そろそろ次行きません?」


自分の世界に入り込んでいた俺を連れ出してくれた。どう考えてもメインヒロインのシーナだが、シンジくんにとってのカヲルくんみたいな存在なのかもしれないな。うんうん。


「おう。どんどんやって片付けちゃおう。」

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