第8話 クエスト開始!?

  俺たちが受けたクエストは、「果樹園の害虫、「キシマオオバチ」の巣を七個以上駆除せよ」というものだった。

 要するに蜂の巣を取って、集会所でレンタルされた麻袋のようなものに詰めてから帰ればいいのである。


 ハチとは言っても刺されたら死んでしまうようなものではなく少し腫れる程度らしく、完全防備の恰好ではなく、俺もシーナも着替えはしていない。

 害虫な所以は、成虫が花の蜜を吸うのではなく、果樹園の果物を強力なあごで、ガリガリかじってしまうからだそうだ。


 「じゃあ、行きますか。」

「はい。」


  

 俺とシーナは虫網を片手に、もう片方の手には麻袋?を持って、果樹園の入り口に立っていた。



 集会所で、クエスト受注用紙に名前やら何やらを色々書いた後に、「出発」という欄に丸を付けた瞬間、この草原にテレポートというか、ワープというか、瞬間移動のような感じで、気づいたらここに立っていた。

 びっくり仰天した俺は腰を抜かしそうになったのだが、シーナが平然としている様子からすると、別に大したことではないらしい。


 

 「そういや、シーナは虫って大丈夫なのか?」

「ええ。田舎育ちですし、慣れてます!」


 何とも頼もしい限りである。

 かくいう俺も、それなりに虫取りはやってきたつもりだが、東京生まれ東京育ちでは田舎育ちの人と比べれば雲泥の差があるに違いない。


 「巣の大きさは、どのくらいなんだろうな。」

「この紙には、「大きいものもあれば、小さいものもある」って書いてあります。」

「それって、書いてないのと一緒じゃねーか。」


 俺たちは果樹園のおじさんにあいさつをしてから、一本一本、木をチェックすることにした。

 柑橘のいいにおいがするが、付いている実はどこからどう見てもスモモ。


 「この異世界は、何がありで何が無しなのかよくわからないな。」と思うが、ゲームでも何でもない現実なのだから、そんなことを気にしても仕方がない。


 「あ!あれじゃないですか?!」


 シーナの指さす方に目を向ける。俺の頭くらいの茶色いものが木の枝からぶら下がっているのが見える。高さは手を伸ばせば届くくらい。俺とさほど背丈の変わらないシーナなら届くだろう。


 「これって、素手で行くのか?」

「いえ、私はこれで行きます。」

 例のオープンフィンガーグローブ。

 「それだと、掴みにくくないか?」

「でも、攻撃力と腕の耐久力が上がりますし、スピードも上がります。」


 そう言ってシーナは、クマを倒し高値で手に入れたらしい、このレベルのクエストには少々もったいないであろうオープンフィンガーグローブで、蜂の巣を掴み、麻袋に突っ込んだ。


 「ふぅ。一つ目ですね。」

 そう言ってさわやかに笑っている。


 「さっき、攻撃力だとか何とか言ってたけど、何なんだ?」

「えーっとですね、」

 そう言ってシーナは、オープンフィンガーグローブのちょうど手の甲の辺りを右手の人差し指でスライドした。

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