第7話 シンデレラ?

 「うーん。どれがいいとかあります?」

 ついさっきまでおっとりした金髪巨乳美少女だと思っていた女の子、シーナは金属のガードが付いたオープンフィンガーグローブをガツンガツンとぶつけながら、笑顔で俺の方を振り向いた。




 この世界には電気が存在しないのか、建物の中は昼でも薄暗い。


 一階がクエスト関係の窓口とずらりと並ぶ掲示板。二階は飲食店になっていて、三階は宿になっているらしい。




 幸いなことに日本語だらけの掲示板には、誰でも受けることができるらしいFランクからCランクまでのクエストが並んでいる。異世界転生モノにはありがちな「喋ってるのは日本語なのに、文字は象形文字」みたいなパターンじゃないのは助かったぜ。

 なんて、胸をなでおろしたが、そういやこの建物の前には「集会所」という看板があったはずだ。なんのこっちゃない。



 

 「うーん。まだ武器が買えるような金はないし、収集系のクエストがいいかな。」


 お金になると言われた野イチゴを市場で八百屋をしている男に売ったものの、ぼったくられたのか何なのか、2000メリーしかしなかった。シーナに価値を聞いてみたところ、日本円で言うところの1000円くらいの様だ。

 ちなみに、一番安い両手剣は10000メリー程するらしい。一応レンタルもされているようだが、レンタルの道具の中でも武器は全然ダメらしい。


 「そうですね。農園の害虫駆除のクエストを受けつつ、何か今日のご飯になるものでも探しますか!」

「え、いいけどさ、シーナにとってはランク低すぎないか?このクエスト。」

 

 そんなクエストじゃ、山で遭難してクマに会ったりしない限りは、オープンフィンガーグローブも必要ないはず。

「付き添ってくれるのはありがたいではあるが、そこまで助けてもらうのは良くないのではないか」

 控えめというか、遠慮がちというか、美徳なのかもしれないけれど時と場合によってはもったいない気もする日本人精神である。



 「いえ、私もそんなもんです。」

「そうなのか?船も持ってるし、装備も服も結構な値段しそうじゃないか」

「それは、」


 シーナは恥ずかしそうに目を伏せた。




 なんだろう。水商売とかでもやっていたのだろうか。

「俺より年下の子にそんなことをさせるなんて、それは一体どこのどいつだ!」とでも叫んでやろうか、と思った時だった。



 シーナが口を開いた。

 「私、前いた街で、キノコを集めるクエストをやってたんです。」

「そのクエストをやっているときに、とても大きなハイイログマが出て、必死に逃げたんですけど、追いつかれちゃって。」

「もう死んじゃうと思って、そばにあった大きな木に一目散に登ったんです。でも、クマもその木に登ってきたんです。」

「でも、クマの重さでその気が折れて、クマがその下敷きになって......。」

「超級冒険者の人がクマ討伐のクエストを受けていたらしいんですが、私が報酬全部もらちゃって、それで。」



 「成金かーーい!!」

 目を伏せて恥ずかしがる金髪巨乳美少女は、ラッキーでクマを倒した、シンデレラガールでした。




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