第6話 異世界ライフスタート!

「随分、賑わってるな」

「ええ。この川の流域の街では1番人口が多いですから。」

自動操縦なのか魔法なのか、何もすることなく船着場に泊まった船からは、東南アジアやブラジルの川近くの街のような雰囲気の景色が見える。



 雑多に並んだ色とりどりの屋根。野菜や果物、魚や、明らかに異世界のモンスターの類であろう禍々しい骸骨や毛皮なんかも露店売りされている。



「集会所」に向かって歩きながら、売っているものや、行きかう人を観察する。


「クエストってのは、誰でも受けられるのか?」

「何年か前に自由になりました。」

「なるほどー。じゃあなんでもいいから金を稼ごう。このままじゃ俺は何も出来ないし。」

「わかりました。ハリムューリも美味しかったですし、お礼にお供します。」


シーナはなんとも礼儀正しい娘である。平民の出身だと言っていたが、言葉使いも立ち振る舞いも、俺よりずっと上品な気がする。


「ありがとう。シーナはさ、どのくらいのランクなんだ?」

きっと、超級とかS級とか、どういう名前なのかは分からないけど、ものすごい高いランクなんだろうなと思いながら俺は尋ねた。


こんな大きな船をこの年齢でたった1人で買えたんだ。きっとこの可愛い見た目とセクシーな格好をしながら、剣の達人とかなんだろう。いや、魔法アリならそっちの方が似合ってるか?

 などと、俺はシーナが答える前に勝手に想像を膨らませていた。


 「中級第一群です。」

「それはどのくらいすごいんだ?」

「「初級、中級、上級、超級、弩級、神級、極神級」とランク分けがあり、それぞれに一群から五群までがありますね。」

「ほう。そうなのか。」


 ふむふむ。とうなずく演技をしながら、俺はズッコケそうになるのを必死に抑えた。


 要するに、別段強いわけではなく、何ならどちらかと言えば弱い方ということだ。



 「初めに会った美少女が街最強クラスの冒険者で、転生者の俺がそれをはるかに凌ぐチート級の強さを持っていて、それに引かれた女の子たちがゾロゾロ集まって来るってのが、チーレムもののお約束だろー!」とでも叫びたい気分である。



 「その一番強い極神級ってのは、どのくらい強いんだ?」

「そう、ですね。強すぎて、戦争に参加するのも禁じられているくらいです。弩級以上の能力を持つ冒険者は、個人ではなく国に雇われる決まりです。」


「ってことは、中級くらいでもかなり強いってことか?」

「ええ。中級になれば、たいていのクエストを受注できますし、安全マージンも十分です。」

 食い気味に尋ねた俺にちょっと引きながら、シーナは丁寧に説明してくれた。


 「これから早速、クエスト受けに行くんだよな?」

「はい。信也さんには身体検査を受けてもらいますけど。」

「おう。そこんところは自信あるぜ。」


 そんなこんな話しながら歩いているうちに、「集会所」とデカデカと書かれた建物が見えてきた。石造りで、イタリアだかギリシャだかの港町にありそうな建物。縦は二階建てか三階建て、外から見た大きさは学校の体育館くらいだ。


 「そういや、俺は剣道やってたから両手剣だと思うけど、シーナは魔法か?剣持ってないみたいだし。」

「あ、言ってませんでしたね。」

 

 と笑顔を見せてから、シーナは背負っていた巾着の紐をほどいた。

 俺がとった野イチゴの残りを入れてもらっている袋である。

 ガサガサと奥の方まで手を入れてから、何か黒いものを取り出した。


 「なんだそれは?」

「グローブですよ。私、拳闘士なので。」

そう言って、ガツンと拳を合わせる。


 

 旅のお供であり、最初の相棒になるであろう金髪巨乳の美少女は、その上品さと美しさとは正反対の戦い方をするらしい。

 

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