第11話 成金



「クソ、見れねぇのか。」




スキルが反復使用でレベルアップするタイプなのか、何か特殊なアイテムでも必要なのか、俺がいくら人差し指で鎧をスワイプしても、ステータスは見ることが出来ない。


ただ指先に金属の冷たい感触が伝わってくるだけ。傍から見れば鎧を指でツンツンしているマヌケ野郎にも見えるかもしれない。


「シーナ。この鎧のステータス見れるか?」


チート武器でありますようにと願いながらも、「俺は転生者なんだからどうせこの鎧はチート武器なんだろう」という期待とも確信ともなんとも言えない感想を抱きながら、シーナに鎧を託す。



「えーっと、」

シーナは甲冑のちょうど胸の辺りをタブレットを使う時のように指先でスワイプした。


「……。」

「……。」

「……。」


3人とも、一言も喋らない。

と言うより、甲冑のステータスを見ているシーナが一言も喋らないが故に、俺と受け付けのお姉さんはただシーナの言葉を待っていた。


「これは、、」

「強いのか!!?」


転生者がチートというのはお決まり。チート能力の場合もチート武器の場合もあるが、どっちにしろめちゃくちゃ強い事には変わりはないだろう。


「いえ、」

「高いです。」


俺はニヤニヤというかホクホクというか、口元を緩ませたままの表情で硬直していた。と思う。

「は?」とか「嘘だろ!」とか「嘘だッ!!」とか、ツッコミを入れることすら出来なかった。


「どのくらいなんですか?」

「7000万越えです。」

「はァァァ!!!!!!?」



「凄ぉーい!!」

「やりましたね!」


「お、おう。」

「これだけあれば、田舎なら豪邸が建ちますね!」

「ああ。そうだな。」


「チート武器じゃねぇのかよ!」という気持ちは何処へやら。

7000万なんて金額を持ったこともないが、去年のお年玉の2000倍。もうなんだって出来るような気がしてきた。


「これ、どこで売るんだ!、?」

「えーっと、普通の武器でしたら武具店なんですけど、」

「このくらいだと、骨董店か、オークションに出した方がいいかもしれないですね。」

受け付けのお姉さんは若干引き気味だが、そんなことを気にしている場合ではない。


「わかった!行くぞ!シーナ!」

「は、はい。」


俺はシーナの手を引いて集会所の外に出た。


どのくらいの時間、クエストをやっていたのか、俺がこの世界に来たのが朝なのか昼なのか、そもそもこの世界の人々が時間というものを理解しているのか分からないが、外はもう真っ暗になっていた。



一文無しの状態から、一気に7000万。俺は完全なる成金になった。







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