第10話 蜂の巣詰めクエスト、実は……。

「これ、結構しんどいな。」

「はい、これぇ重いですぅ……。」


俺とシーナはもう何個目かも分からなくなってきた蜂の巣を麻袋に入れた。巣ひとつの重さは重くても2、3キロくらいでクエストの初めの頃は大したことは無かった。


ところがどっこい。

5個目の巣を袋に詰めたあたりから、足やら腰やら腕やらがものすごく痛くなってきている。


もちろん重さもあるだろうが、この麻袋には持ち手はどこにも無く、俺たち2人はサンタクロース状態である。



いっそキャリーバッグみたいにしてくれたなら、何倍も効率が良くなるのだろうが、そこの所はレンタル故に仕方ないのかもしれない。



「これ、報酬はハチミツといくらだったっけ?」

「8000メリーです。はァ」

割にあっているのかあっていないのか。アルバイトすらしたことが無い俺にはよく分からない。


市場の商品を色々見て回ったところ、メリーという貨幣は日本円と価値はそれほどの違いはないような感じだ。


これで8000メリー稼げれば、今夜の食費と宿費、明日の昼食くらいまでは大丈夫なはずだ。俺は朝食食べない派だし。



「あっ。あっちにあるぞ!」

「こ、これで最後です〜〜。」

「じゃあ、俺が詰めるから、この袋開けといてくれ」

「分かりましたぁ」


シーナは気が抜けたような声を出しながら、最後の力を振り絞って、俺の持っていた麻袋の口を開けながら袋の縁を持つ。


重さに負けて、袋の縁を掴んでいる両手をゆっくりと下げていく様子はまるで水族館のタカアシガニみたいだとかそんなことを疲れた頭で考えながら、俺はついに最後の蜂の巣を袋に詰め終えた。



「依頼達成ありがとうございます。」

「どうも。」

「報酬の8000メリーになります。」

「あ、はい。」


ドン!!


日本円とほとんど変わらないせいか、札が出てくると思っていた俺の前に、大量の金貨が積み上がった。


集会所の受付の野性的な動物っぽい布のノースリーブを着たお姉さんが何やらタブレットのようなものを操作すると、この大量の金貨が目の前に積み上がったのである。



「う、うへぇ!」

思わず変な声が出るが、目の前に積み上がって俺の受け付けのお姉さんのコミュニケーションを阻害しそうな高さまで達している金貨は推定だが日本円になおすと約8000円。


こう見ると圧巻だが、我が国では野口3人樋口が1人。「世界的発見をした医者とベストセラー小説家にしてラブレター代筆屋」と書いてもどこかショボさは拭えない。



「私が保管しましょうか??」

「ああ。よろしく頼む。」

「はい。」


シーナは平然とした顔で腰から下げていた手のひらサイズにも満たないくらいのポーチに金貨を詰め始める。




「何やってんだ?」と言うか言わないか迷っている間に、俺は気づいた。ポーチが全く膨らんでいない。

未来から来た青いねこ型ロボが金髪巨乳美少女に擬人化されたのか??


「それと、依頼主の果樹園からの謝礼がありますので、」

「は、はい。」




「美味しい果物?異世界転生モノだと、未成年でも酒場で酒飲んだりするから果物酒か??」などと憶測を張り巡らせながら待っていると、受け付けのお姉さんが何やら重そうな黒い革の袋を奥の方から引っ張ってきた。



俺たちがついさっきまでハチの巣を詰めていたやつと同じような大きさ。1番大きいゴミ袋より少し大きいくらいの袋。




「なんですか?これ。」

金貨を4次元ポーチ(仮)に詰め終えたシーナも、俺の左肩に顎を乗せるようにしながら、覗き込む。




「馬具と、先祖代々伝わる伝説の鎧だそうです。」

「うんっ!」っとサバサバ系の見た目の何倍も可愛らしい声を出しながら、受け付けのお姉さんは重厚な金属光沢を放つ鎧をカウンターの上、俺の目の前にドスン!と置いた。

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