第2話 安易な考え
「毒あったりしないよな?」
目の前にぶら下がっていた野イチゴのような木の実をブチっと取って、掌に乗せる。
少々酸っぱそうな気もするが、朝から何も食べていない上に夕方にカップラーメンを食べ損ねた俺は、猛烈に腹が減っていた。
文系志望の高校二年生の俺は、植物や毒についての知識はほぼ皆無だ。フグの毒が危ないとかそんなことは知っていても、今目の前にある野イチゴのようなものに毒があるかどうかなんてのはよくわからない。
「まぁ、人が死ぬような毒ってことはないだろ。」
リスク・リターンの計算を色々繰り返した結果、俺はとりあえず持てるだけポケットに詰め込むことにした。
「水があるところまで行って、食べた後にたくさん水飲めば大丈夫だろ。」という考えだ。
水辺が近くにあるのかどうかはわからないが、そもそも俺には「何かよくわからないが、アフリカっぽいところにいる」というだけの情報しかない。少しは攻めた考え方をしないといけないだろう。
「川あるじゃん。」
水辺があるのか、と、木に登って確認してみたところ、ずっと遠くに川のようなものが見える。もしかすると湖の可能性はあるかもしれないが、この平坦な大地のすぐそこがまさか海ってことはないだろう。
どのくらい先なのかはよくわからないが、不思議とのどは乾いていない。コンビニに出かける直前に水を飲んだからなのか、なんなのか。川に着くまでにのどが渇いて野垂れ死ぬ、なんてことはないだろう。
アフリカというと太陽がギンギラギンとしていそうだが、そんな昭和のアイドルみたいなことはなく、半袖のTシャツの上にパーカーを着てバスパンという俺でも全く汗をかかないくらい、涼しい。
「南半球は、冬なのか。」
それにしては暑い気もするが、納得して歩き出すことにした。
「遠いな。これ。」
山手線なら二駅分くらいは歩いたのではないか、というくらい歩いたところでやっと川が見えてきた。もう三十分くらいは歩いたのかもしれない。
飲めるかどうか、というのは心配していたが、そんなことは無駄だと言わんばかりに川の水は澄んでいた。川幅五十メートル以上はありそうだが、かなり遠くの水の中が見えるほど水がきれいだ。長野の清流とか沖縄の海とか、そういう観光地にも負けていないのではないだろうか。澄んでいる割には流れが遅く、メダカのようなグッピーのような小さい魚も泳いでいる。
「飲めそうだな。」
安心して、ポケットの中からさっきの野イチゴを取り出してむしゃむしゃと食べた。
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