第5話 家族って金で買えるんですか?(笑)(前編)

 う~ん。泣ける。泣けるなあ。

 某有名芸能人と、その愛犬との絆と友情のドキュメンタリー番組。

 私は、それを目に涙を浮かべながら観ていた。

 こういうのを観ると、友情だとか絆であるとかは、種族の壁をも乗り越えるのだと実感させられるのだ。


 ところで、私には弟がいる。小学四年生の弟だ。

 弟は、とてもかわいい。あの愛犬「ココ」よりも。

 でも、そんな私の愛情は弟には届かない。種族の壁どころか、姉弟の壁すら超えさせてくれないのだ。

 

 そんな弟はというと、私の隣で眠そうにしている。

 かわいいやつだなあ。きっと今日は学校が大変だったんだろうな。

 ゆっくり休んでね。




 それから30分ほどたって、私はずっとテレビにくぎ付けだった。

 私の顔はさらに酷くなった。


 『僕にとって、ココは家族なんですよね』


 うん、うんうん。そうだよね。

 種族の違いなんて関係ないよね。

 その友情は本物だもんね。


 「キャハハハハ!ペットが家族だってぇ。おもしろい、おもしろーい。」


 乾いた声がリビングに響き渡った。

 なんだろう。なんか今、邪悪な言葉が聞こえたような…。


 「ねっ、あねうえ。この人おもしろいですよね。ふっふふ、ハハハハハ」


 え?取り憑かれてる?

 私は、弟の前でとっさに、両手の人差し指をクロスさせてはみたが、何も起きない。

 

 ということは、これは紛れもなく弟だ。邪悪だが、けれどもかわいい。


 いやいや、いかんいかん。弟が間違ったことを言っている以上、姉としてそれを正さなければならない。


 「え~。どうしてそんなこと言うの。そんなこと言っちゃ、だ・め・よ」

 私はそう言いながら、弟の鼻をつんつんと突いた。

 弟は、鼻息で私を追い返した。うん、それはそれでかわいいなあ。


 *

 

 その時!

 弟の目が怪しく光る……!

 ヤバイ。ワタシ……、論破されるっ!!!


 「じゃあ、アナタに質問です。ペットと会うためにはどこに行きますか?」

 アナタとか言い出した……。さっきまで「あねうえ」だったのにぃ……。


 「え?それは……、まあ、普通はペットショップじゃない?」

 「はい。そうですね。それで、ペットショップに行ったら何をする?」

 「えーっと、自分がいいと思ったワンちゃんとかネコちゃんとかを選ぶ」

 「そのあとは?」

 「う~んと、お金を……」


 「家族って金で買えるんですか?(笑)」


 「うわあ、憎たらしぃ~。なにその憎たらしい顔~」

 私は、弟をおちょくってそう言ったが、弟は私に構ってくれなかった。

 

 「例えば、拾ってきましたとか、愛護センターから引き取りましたとかだったら、家族っていうのもわかるんですよ。でも、多くの人はペットを金で買うわけでしょ?テレビのこの人はどうだか知らないけど、金で買った人がさ、『この子は家族です!』だなんてエラそうに言ったりするわけじゃん。『いや、お前がそれ言う!?』っていうね」


 あれ?正論マジ

 もしかして、正論マジなんですか?これ。

 そんな……、かわいくないよ……。


 私は、しばらくこの日のことを考えるのをやめられなかった。




 あと……、

 

 不快に思われた方がいらっしゃいましたら、申し訳ありませんでした。

 私に免じて許してください。



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