日常に溢れている「まなざし」でもありました。

タイトルの通り、江戸川乱歩をテーマにした卒論に挑む女子大学生の「私」。

大学生活を経験したことのないですけど、とても読みやすかったです。
語り手の「私」の性格のおかげでしょうか。もちろん、作者の描写力があってこそですけども。
「私」のあけすけな本音や、行動力、観察力といったものが、リアリティをもって綴られているので、作中で「私」が覗き見する乱歩の小説の登場人物を介して小説の世界を覗き見しているように、読者のわたしたちも、彼女の奮闘を覗き見しているような読書体験を与ええくれます。
「私」の奮闘ぶりを見守っているうちに、彼女が向き合う「まなざし」は、乱歩の小説の中だけでなく日常のどこにでも溢れていることに気がつくでしょう。

最後まで読み終わってから、イケメンの名木橋先生からアドバイスを与えられる前から、「乱歩のまなざし」は「私」のためにある課題だったのだと静かな驚きとともに気がつかされました。

江戸川乱歩が好きな人はもちろん、名前だけしか知らないという人も、ぜひ読んでほしいです。

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