重厚なテーマを扱いながらこの読みやすさ。若い読者に多く読まれて欲しい。

精霊のお告げによって全ての政令が、国法が、
その他のあらゆることが決められる世界。
その世界で、人はどうあるべきなのか。
人が自分の意志を持って生き、愛し、戦うとはどういうことなのか。
現代社会の人間にも通じる重厚なテーマを扱った作品です。

といっても、その問題意識の大きさに対して、
物語は数々の伏線を張りながらも、とてもシンプル。
大きく構えること無く、ストレスレスに読み進められることに、何より感服。
これは、作者の筆力によること大きいでしょう。全てのバランスが良いです。

また、主人公カートの素直さがものがたりの
大きな原動力となっているのも大きなポイント。
彼の純粋さに惹かれて、いつの間にかその行動を応援し、
その一挙一動にワクワクドキドキし……
そのうちに作品世界に、すうっ、とごくごく自然に
入り込んでいる自分に気付くのは、実に楽しい読書体験でした。

そして、読後感の爽やかさ。読了後の胸に満ちるは、希望のひかり。
この感情こそ、読者も、カートたちのように自らの意志で
この物語を選び取って読んだこそ得られる喜びなのかも知れません。
この作品に出逢えた、
いえ、出逢う道を選べたこと、選んだことに心からの祝福と感謝を。

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