第13話 コストカットは馬鹿でも出来る
UPHと言う物を知っているだろうか?
Unit Per Hour
一人当一時間でどれだけ仕事が処理出来るかの数字だ、当然、数字が大きい方がコスト的には優秀で、逆に減るとコストが上がっていると言う事で、一時期可視化する為に延々とグラフを作成していた。
言うまでも無いと思いますが、通常作業外なので、サービス残業です。
因みに計算式は、処理本数÷総時間 この場合の総時間は直当たりの人数x7時間
この工場で採用されるトヨタ式カイゼン的にはこの数字こそ至高みたいな優先度となります。
では、この数字の上げ方だけど、やり方は簡単、人を減らせば良い。
プロ野球やなんかで守備に回ったときの人数は最大で9人だけど、ベンチを温めている最大25人を入れ替え前提で考えるわけですが、9人居れば良いんだから15人も予備人員必要ないですよね? 全員が何でも出来る人員、キャッチャーがバッターも出来てピッチャーも守備も出来れば9人だけで回りますよね? てな感じに少数精鋭と言う言葉はこう言った無茶ぶりの塊です、誰かが故障した時点でどうなるかはお察しの通りです。
更に言うと、キャッチャーをバッターにする育成コストは本人のやる気と言う名の下、サービス残業で賄われます、会社側で払う気は無いのでお察しです、尚且つちゃんとしたマニュアルは無く、ほぼ口伝と成ります、育成効率がこの上なく悪いのは言うまでもありません。
話を戻して、人を減らして割る数と時間を減らせばてきめんに数字が上がる。
そんな前提なので一定水準を超えると一切意味が無くなります、最後の1%を上げるのに延々とコストがかかる二次関数的な曲線を描きます。
乾いたぞうきんを絞るが如き無意味なシステムとも言われる所以です。
では実際、実際に直9人必要なところで一班10人居たとする、この1人は雑用補助的に駆け回り、突発休暇なんかで1人足りなくても回るのがリーマンショック前までの生産体制だったのですが、この1人はUPH的には邪魔な訳です、常に数に直結する作業をしているわけではありませんから、トヨタ式カイゼン的にはこの数字に表れない部分は仕事をしていないとして扱われます、書類仕事なんかを残業で仕事として扱わないのは、こう言った風土も原因として有りそうです。
そんな訳で、邪魔な余剰戦力の一人はどこかの人手が足りない部署に飛ばしてしまいましょう。リーマンショック以降は派遣切りなんかもあって、各部署かなり居なくなったので、人手が少ない部署はいっぱいあります、ついでに新人の教育はコストが掛かるので大量採用は止めておきましょう、少数精鋭!
変なところで、以外とこの職場は人間が残っていたと言う、相対的には比較的マシな職場だったと言うことが証明されたりしますが、これは余談です。
そして、一人減ったことによりどうなるかというと、UPHは上がる、固定コストである人件費が下がるので、数字の上でのコスト効率は良くなります。意外と消化数字は減りませんし、当然増えません。
トラブル発生時に動ける遊撃人員は居ないから、トラブルが無いことを祈って仕事をします、トラブルが発生した時点で詰むので、諦めて残業早出、休日出勤でつじつまを合わせましょう。
ここで一つの言葉を贈りましょう。
「事故は起るモノさ」BYトーマス
こうして、誰か一人休んだ時点で色々と崩壊するような軟弱システムが出来上がります、尚且つ、一人頭の作業量は、早足・競歩で常に歩いているような強度です、歩くようなゆっくりや、全力疾走は出来ません、早くしても見逃したら無意味なので、いくら急ごうとも、手順を飛ばして見逃しを出してしまったら酷いことに成ります。
だから時間コストは一定以上、絶対に減りません、ですが、この一人足りない状態で常に仕事を消化し続けるというのはかなりストレスが掛かります、不良品発生による連絡に掛かるロスや、ちょっとしたトイレ、休憩時間なんかもかなりのロスになります、そんな時のための余剰戦力の一人だったわけですが、居なくなったのでアテには出来ません、それでも頑張る働き者のおかげにより何だか間に合ってしまうようになります、コレで余剰戦力の一人が余計だった事が対外的に証明されてしまいました、これからこの最低限の人数で回していくこととなります。
そんな訳で、順を追って悪化していきましょう。
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