第14話 トイレに行く資格はない

 注意・シモネタ的なアレが含まれます


「すいません、トイレ行ってきます」

 仕事中、どうしようもない便意に襲われ、力なく一言断りを入れてトイレに向かおうとする。

「もうちょっとで終わるんだから我慢しろ!」

 どうしようもない事を上司が文句を言う、我慢できるのなら我慢しているのだから、無理だと言った時点で無理なのだ。

 例え仕事時間のp了10分前だろうと。

 何が起っているのかというと、純粋にトイレの我慢が限界なので、上司に一言入れてトイレに行こうとしているのを、無理矢理な根性論でどうにかしろと言われている流れだ。

(無理です!)

 叫んでいる余裕すら無かったので、無視してトイレに駆け込んだ。

「お前! 何処行ってんだ?!」

 無線から騒がしい上司の声が響く。

「トイレです、言ったじゃないですか」

 便器に座った状態で一段落したので此方の無線で返事をする。

「遊んでんじゃないんだぞ?!」

「漏らせとでも言うんですか?」

「本当にトイレなんだろうな?」

「トイレですよ、音でも聞きたいんですか? ゲリライブでフィーバーしたいんですか?」

 アレな感じの音なら現在進行形で流せるが、其れこそ誰が得するというのか。

 如何してくれようと無線の向こうで騒ぐ上司を内心で睨んだ。

 因みにこの無線レシーバーはチャンネル固定で職場全体に繋がっているため、つけている人は全員聞こえているという状態である、念のため。

 更に言うとこの無線、その上の課長達もラジオ代わりに聞いている可能性のあるモノだと言うことを念を押しておく。


 トイレを済まし、現場に戻る頃には終業のチャイムがなっていた。

 実際終わり際なのは確かでは有ったのだ、其れを我慢できるかは当人の問題で、度重なるストレスにより過敏性大腸炎を患った状態では、その我慢は一切出来ないと言うのが実情なので、社会人として死にたくなければ走るしかなかっただけで。

「お前は真面目に仕事してんのか?!」

 仕事終わりと休憩所に帰って来たところで、先程の上司に捉まってお説教タイムと成った。

 そして、便意なんて当人以外にはその切羽詰まった状態は伝わらないため、結局説教の対象となるわけだ。

「漏らせとでも言うんですか?」

「社会人なんだから我慢できるだろう?」

「出来ないから行ったんです」

「返事ぐらい待て」

「待ったらトイレに行かせてくれたんですか?」

「トイレに行くのを止めるのも俺の仕事だ!」

 訳の分からないことを言い出した、話すだけ無駄らしいので、あきれ返ったと大きくため息を吐き、もう無視することにした。

 上場企業だろうと何だろうと、ライン作業者と成った時点でただの数で、自由にトイレに行く資格すらないらしい。

 当然だが、ただのパワハラなのだが、社内の雰囲気ではこの理不尽なお説教も当然の流れという状態なので、誰もツッコミを入れる者は居ない。

 因みに、先に言った過敏性大腸炎だが、所謂ストレス性の下痢的なモノだ、自分の症状としては便意を感じた時点で数分もかからずに止まることもなく、止められずに出てくる、我慢は出来ない。

 朝一駅のトイレ等で切羽詰まった様子の面々が行列を作るのもコレだったりするので、この病は闇が深い。

 朝一で出してしまえば次の朝までは大丈夫な為。立ち回りを間違えたりしなければどうにかなるわけだが、時々間違えるし、朝一のコレに当たるモノが変なタイミングで来ることも有るので、そのときはこんな事に成るわけだ。

 因みに1直、朝勤務の時なら、朝食後に来るのがソレなので、余裕を持って出して行ける、ハズ……

 時々時間差で来る時もあって、車から降りて駐車場を走って会社の入り口に有るトイレで、と言うことすら間に合いそうにないことも多々あるのだ。

 今はストレスが減ったお陰か、腸の動きも落ち着いて半日でも我慢できるのだが、当時は本当にどうしようもなかった。


 因みにこの上司、その後ソレなりにパワハラや何やらで問題になったらしく、移動となった。


 この人、他人がペットボトルのお茶を飲んでいるときに、「それ、俺のおしっこ入れといた、がははは」何て訳の分からない台詞が出てくる類いの人物である、何一つ尊敬できる類いの人物ではなかったと言っておく。

 更に言うと、同僚達も一緒に笑っている類いだ、職場の雰囲気お察しである。


追伸

 こんなのに出くわしたらさっさとレコーダーでも使って証拠集めて人事部と労基にでも突っ込もう。

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