第12話 休む権利は有りますか?

「ん? 有給休暇? 理由は?」

 はい、出落ちの労基法違反、有給休暇の理由確認です。

 前に言った通り、人手が少ないので一人休んだ時点で戦線が崩壊します。

 混ぜる部署と作る部署と焼く部署と検査する部署、出荷待ちの倉庫とか全て別部署で、生産計画通りに作る以外、ブレーキも何も有りません。実質的にアクセルべたぶみの全力生産です。何が何でも機械やボイラーを止めずに生産するための構造ですから。

 平たく言うと、誰が休もうが倒れようが仕事は減りません、其処が社会人の辛い所です。

 更に言うと、例の大雪の日の様に、天災が有ろうと設備が動く限りは稼働します。

 物流が止まろうと備蓄材料だけで1ヶ月は稼働できると言う、会社側としては理想的な製造システムによって最大限の稼働を約束されます。

 結局大雪、豪雪災害の時は1週間稼働して、出荷倉庫が出荷待ちで埋まり、置き場が無くなったと言うことでやっと止まりました。

 因みに、出社することすら難しいこんな時、会社の対応としては、ただ頑張って出社しろとしか言われなかった、台風休暇なんて有るはずもないので諦めよう。

 そんなわけで、前に話した震災の時に工場が止まったのがどれだけ珍しいかがわかってもらえるかと思う。

 脱線したので話を戻そう、一人休んだら、休日出勤一人か、残業と早出が二人ほしいと言う調整が必要になるので、誰も休まないと言うのが仕事が上手く回るための前提条件に成るのだ。

 最低9人必要だけど、一班の人員が8人しか居ないという既に崩壊起こしている状態なので、誰か休むとダムが決壊するようにぐだぐだになる。

 そもそも何で人数が足りないんだって?

 今までの説明の積み重ねによってわかる通り、とても居心地の悪い職場だから、全て諦めて唯々諾々と続けられれば問題は無いけど、入ったばかりなら失う物はまだ少ないと言う事で、一年目で辞めるのが6割と言ったところです、お察しください。

 年中無休で求人募集かかっている時点で、まあそうなるなとしか言えませんから。

 4班3直交代だから誰かは休んでいるから休日出勤要因は引っ張り出せるけど、36協定で7連勤禁止なので、その兼ね合いを考えるとかなり面倒な調整が必要になります。

 どこか一カ所あふれると、前工程の仕事も止まり、結果として総ての仕事が増えるというグダグダ仕様なので最早止められません。

 だから、休まれると困るのです。



 じゃあどうするかと言うと、休暇申請の際には、上司2人の判子が必要で、具体的な理由を求めて来ます。

 例えば。

 子供の運動会はOK

 消防団の集まりはOK

 会社主催の民間大会ボランティアは、直の都合が合っていれば行けだからNG

 稲刈りはOK

 免許証の更新はお前が寝なければいい言う事でNG

 結婚式は基本OK だけど誰が結婚するのか本当にその日なのか招待状を寄越せとか言い出します。

 葬式法事はOK ただし前述の通りです。

 ついでに、土日以外を指定すると「絶対嘘だ、平日に冠婚葬祭するはず無いだろうが!」何て発狂しますが、祝日も有りますし、平日結婚式も当然のように有りますのでと開き直るしか有りませんでした。

 通夜は基本的に忌引き休暇だからOKだけど、突発なのでタイミングが悪いと職場の都合でお前が寝なければいいとか言い出して時々NG

 通院は何回も通っていると病名やら治療法やら延々と聞き始めて、対処療法的な物だったらお説教。具体的には椎間板ヘルニアの治療で保険着用の為に順を追ってブロック麻酔とかだったらお説教でした。

 絶望顔で夜勤明けに休暇を使わずに名古屋まで新幹線のレーザー手術で次の日出て来るとかやらされてました。

「皆! これこそが理想的な社会人の姿だ! 見習え!」

 何て褒められていましたが、正直見習いたくないし、もう嫌だとしか思えませんでした。

 ついでに、母の手術の付き添いで休みを取ろうとしたら、お前が居た所で手術の結果は変わらんだろうと言ったあげくに有給申請を削ってきました、この辺からもういやだと思い始めました。

 突発インフルエンザはOK 但し、診断書を持って来いとか言い出した挙げ句に、後日人事に上司が怒られて、領収書だけで良かったとか言われます。

 ノロウイルス感染は「診断書貰ってこい!」と発狂しましたが、医者に電話を代わってもらい、「書けるかボケ!(意訳)」と言ってもらったら黙りました。

 熱中症は「病気じゃないんだから、仮病だろう? 診断書貰ってこい」何て言われました。

 なお、指示した癖に診断書の料金を払いません。


 そんなこんなで、休ませる気は上司の胸内3寸で気分次第、こうして休暇申請を却下して仕事を円満に回すことが使命だと思っています。

 しつこいようですが、労働者の権利としての休暇申請は労基法で保証されています、本来なら会社が潰れるぐらいの具体的な理由が無いと休暇申請を却下は出来ないという、かなり強い権利なのですが、古い人間はそんなことは知らないと言う事に加え、会社というのはかなり閉じた世界なので、其れが正解と言う思い込みで世界が回り続けます、現場では間違いを指摘する人は居ませんので、人事部に掛け合うか、労基に投げ込みましょう、名指しで具体的に行かないと潰せないので注意しましょう。

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