第6話 3.11あの日の事 その1
注・当時の覚え書きも無しに記憶を頼りに書き出します、結構長く成る様なので分割、ご要望有るようでしたら別サイトに当時の画像も付けられます。
因みに、この件に限ってブラック感は無いと思います。
「?」
ぱちりと目が覚めた、現在地は社員寮の自室、時間は14時半ごろ、本日は夜勤の予定なので、今日は12時過ぎに寝た、最低でも18時まで寝て食堂が開いたら朝飯だか夕飯だかを食べて、23時から翌朝8時の仕事に合わせて22時過ぎまで寝直すのが日課なので、起きるには未だ早い。寝直して置くのが正解な訳だが・・・・
そんな事を考えつつ布団の中で寝直そうと目を閉じて微睡む。
ズズズズズズ
小さく衝撃が走る。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ
謎の地響きが響いて来た。
ガタガタガタガタ
ガッチャンガッチャン
初めて感じた様な揺れが来た。
何と言うか横に揺れるのだ、建物ごと壊れそうな感じに右に左にがっちゃんがっちゃんと、手を触れていないのに引きが開き、戸棚の戸が開き、中身が次々に落ちて来る、棚の上に置いて置いた物が全て落ちる、何なら棚も一緒に倒れて来る、ガラスが割れなかったのは不幸中の幸いだった。
ヴェヴェヴェ ヴェヴェヴェ ヴェヴェヴェ
携帯が名状しがたい音を立てている。
そんな時、自分がしていたのは。
机の上に置かれたPCやらTVやらその周辺機器が落ちそうに成って居るので、只管受け止め、ケーブルを外して床に置く作業をしていた。
何時までも揺れる世界に、何が起こって居るのだろうと言う疑問を挟む余裕も無く、只経済的な損失を最小限にする為に動いて居た。
何時しか揺れは収まり、携帯の異常な音も収まった。
「避難してくださーい!」
管理人さんが声を張り上げて外を走り回っていた。
落ち着いて部屋の中を見回す、奇麗に並べたり収納に収めて有った物が、全て床に散らばり、まさにしっちゃかめっちゃかとしか表現できない状態、床は足の踏み場もない状態に成って居た。
一先ず外に出られる服に着替えて厚着する、携帯を握りしめ、社員寮の建物から出て、寮の周囲にある駐車場で、先に避難していた同僚の方々や、管理人さんと合流する。
この社員寮は元からある旧舘と、比較的新しい建て増しされた新館を渡り廊下で繋げた形状をしている、其の渡り廊下は先程の振動の直撃を受け、鉄筋コンクリートが割れて砕けて、壁の穴から反対側が見えると言う、何とも言えない状況に成って居た。
「良かった無事でしたね?」
「職場と名前、今日の勤務直をどうぞ」
外の駐車場の端っこで管理人さん達が点呼を取っていた。
建物からある程度離れろと言う事で批難集合場所が此処に成ったらしい。
「何処何処の職場の誰々、夜勤予定でした」
指示に従って答えつつ、名簿に書き込んで行く。
「どうしましょうコレ? 僕昼夜でこれからなんですけど?」
職場の先輩が途方に暮れた様子で管理人さんに質問する、管理人さんも困った様子で首を捻るばかりだ。
職場に連絡を取ろうにも屋内の内線しか無いし、避難指示が出てから建物の中に入るのは禁止されて居るので連絡の取りようが無い。
昼夜は15時半から23時半までなので、ちょうど今からだ、確かに仕事が出来る状況ではなさそうだが、
「まあ、時間に成ったから行って見ます」
そう言って先輩は出社の姿勢を取って職場である工場に向かっていった。
基本的に工場入り口のロッカールームに仕事着の着替えは有るし、社員食堂も有る、仕事道具は現場に有るので身一つで行って何の不都合も無い。
先ずは家族の生存確認をしようと携帯を取り出すが、通話はまったく繋がらなかった。
そんな事をして居る内に、携帯が鳴る。
「ニュースで酷い事に成ってるけど、無事?」
北海道の大学に行って居る弟からの生存確認だった。
向こうからなら繋がるらしい。
「こっちは無事、実家の方は連絡着いた?」
「其れは之から」
「じゃあそっちで連絡頼む、こっちは会社で避難してるから無事だと伝えてくれれば良い、こっちの地方回線死んでるみたいで電話繋がらないんだ」
「了解」
あっさりと生存報告が済んだ。
「あれ? 電話繋がった?」
避難している別の同僚から質問が飛ぶ。
「向こうからなら繋がるみたいですね、発信地北海道ですから」
多分遠すぎて基地局が違うので回線の扱いが違うとかだろうか?
「成程、そう言うのも有るのか?」
ヴェヴェヴェ ヴェヴェヴェ ヴェヴェヴェ
そんな事を言って居る間にそこらじゅうの携帯から緊急地震速報の警報が鳴り響く。
ガタガタガタガタ
先程の本震よりは緩いが、何時もの揺れより確実に大きい揺れが来る。
「余震多いですねえ・・・」
思わずげんなりと呟く。
「そうだな・・・」
同じくげんなりと返してくれる。
携帯を取り出してニュースを確認する、電話は繋がらないが、インターネットは繋がって居た、因みにこの時代は2011年、スマホは未だ出たばかりなので普及して居ない、ソニーのXperia初代(本体容量512MB)とかシャープの眼鏡ケースとかの過渡期も過渡期でガラケー全盛期、ラインなどと言う便利通話アプリは未だ普及して居ないので電話が通じないと言う時点で生存確認は詰みである。
因みに、メールも散々送ったが、返信は来ていない。
メールの通信システムもdocomoSPモードやらezwebの時代なのでかなり重かった。
更に言うと、当時使って居たのはAUの横スライドビブリオ、AUのメイン回線である太平洋海底ケーブルが盛大に断線して繋がらなくなっていたと言うのは後から知った話である。
「震度6弱から震度6強に上がりましたね、震源が福島県沖だったり宮城県沖だったりはっきりしませんけど」
「震度6か、俺二回目だ、よっぽど運が無かったな?」
先輩の一人が何とも言えない表情を浮かべて呟く。阪神サバイバーだったらしい。
この工場、本社が阪神に有ったので、工場閉鎖と同時に各地に転勤と言う形で、こっちに移住して来た人もかなりの人数居たらしい。
「・・・其れは又・・・お疲れ様です」
そうとしか言えなかった。
「しかし、寒いですね・・・」
現在地は東北の南端とはいえ3月の寒空の下、建物の中に入る訳に行かず、雪もちらついている、其のまま外に居たら風邪を引くか凍死するかと言う状態だった。
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