微妙な異能持ちの彼女と大型ワンコな彼の硬派で甘い近未来ファンタジー

 超能力が普遍的に確認されるようになり、ランク付され、管理されるようになった時代。

「自身テレポート一メートル、念動力推定二キログラム、Cランク」

 という微妙な超能力を持つことで、店舗への入店を制限されるなど不自由はあるものの、高校生としてのんびりと過ごす清楓は、ある日、ひょんなことからその能力を使って大型犬のような青年を拾ってしまったことから、やがて厄介な事件に巻き込まれ——。

 緻密に作り込まれた超能力が存在するという世界観と、それを描き出す硬質な描写でまず惹き込まれ、さらに、主人公の清楓さんが狡くどこかアンバランスな大人の窪崎に惹かれていく様子がなんとも甘酸っぱいのです……!

 清楓さんはそれでも受け身で待ち続けるわけではなく、時には自分の能力と創意工夫で危機を乗り越え、大切な人のためには自らの危険も顧みない強さを発揮します。次第に窪崎も、そして事件を通して関わった富沢さえも惹きつけられていき……。

 彼女の持つ能力、暗い過去と親友との関わり、秘められた祖父の思いなど、複雑に絡みもつれた人間関係の糸が、やがて彼女と窪崎さんの想いで切り開かれていくラストは本当にああよかったー! と幸せな気持ちになれる見事な大団円でした。

 おすすめです!

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