第4話 一ノ瀬紫音
数分前。
「くっ、なんて強さ……!」
目の前に現れた巨大な妖魔によって、
一ノ瀬家は、代々優秀な魔術師を輩出する名門であり、紫音もまた将来を期待された若手であった。
魔術師のうち、約二割しか到達できない二級魔術師の座に、弱冠16歳で到達した天才中の天才。
しかしそんな天才であったとしても、一級指定妖魔を相手にするのは、さすがに荷が重かった。
(魔力の波長から、出現したのは下二級指定妖魔だと言われていたのに、実際に現れたのは一級。こんなの、勝てるわけがありません……)
絶望に打ちひしがれる紫音。
その直後、妖魔が彼女を襲った。
『ガルゥゥゥゥゥ!』
「きゃあっ!」
もうやられる。
そう思った次の瞬間、驚くようなことが起きた。
目の前に光の線が走ったかと思えば、妖魔が一瞬で消滅した。
戸惑いながら周囲を見渡すと、一振りの剣を握った男の姿が見えた。
彼が妖魔を倒したと言うのだろうか?
咄嗟に呼び止めようとするも、男は目に見えない身のこなしで消えていく。
「お嬢様、大丈夫ですか!?」
そのまま呆気に取られていると、森の入り口で三級指定以下の妖魔を相手にしてくれていた
「大きな怪我はありませんね。魔力の気配的に、もしや一級の妖魔が出たのかと思いましたが、それすらも倒すとはさすがお嬢様です!」
「……わたくしではありません」
「えっ?」
ぐっと、紫音は千代の腕を掴んだ。
「妖魔を倒したのは、見知らぬ男性の方でした。一撃で一級妖魔を倒せるほどの力を持った者を私は知りません。特徴を教えますので、探してくれませんか? ぜひお礼がしたいのです」
「は、はい、かしこまりました」
千代に彼の特徴を伝えながら、紫音は思った。
彼を探してもらう理由として、礼がしたいと述べたのは事実。
だが――
それとは別に、胸の鼓動が早まり、純粋にもう一度彼に会いたいと。
そう思っているのも事実だった。
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