第18話 気まずさ

 次の日。

 鳥の鳴き声によって目覚めた俺は食卓に向かった。


 すると既に紫音と千代の姿があり、朝食を準備していた。


「……あっ」

「よ、よう」


 紫音と視線が合い、気まずい空気が流れる。

 そんな中、俺はなんとか片手を上げて挨拶した。


 紫音は頬を赤く染めながら、一礼。


「お、おはようございますアルスくん。その……昨日は本当に申し訳ありませんでした!」

「事故だったんだから構わない。それに、その話は昨日で終わらせようって言っただろ?」

「そ、そうでしたね、つい……」


 さらに気まずくなる空気。

 その空気を変えてくれたのは千代だった。


「アルス様、朝食の準備ができていますよ。温かいうちにぜひ召し上がってください」

「あ、ああ。そうするか」


 ありがとうと心の中で告げた後、テーブルにつく。

 白米にみそ汁、それから卵焼きと漬物の品々が並んでいた。


 卵焼き自体は向こうの世界でも食べることがあったが、卵の質や調味料が違うためか、かなり美味かった。

 朝から大満足だ。


「ごちそうさま」


 昨日2人から教えてもらった言葉を告げる。

 さて、今日はこれから何をしようか。


「紫音と千代はこの後何か予定があるのか?」

「私たちは学生の身ですので。今は学校に行けませんが、勉強だけはいたします。その後は魔術の特訓でしょうか」

「……勉強か」


 この世界の常識や、学習内容にはかなり興味がある。

 ちょっと話を聞いただけでも、魔法以外はこちらの世界の方が色々と発展していることが分かったからな。


「興味がある。確か書斎があったよな? 幾つか本を読ませてもらえないか?」

「それは構いませんが、アルスくんは日本語が――」

「文字に関しても言語理解の魔法で読めるようになるから問題ない」

「そうでしたね、忘れていました。改めてすごい力ですね」


 確かに、普通に言語を覚えようと思えば、どれだけ頑張っても一月はかかる。

 それを解決してくれるこの力はかなり役に立つ。


「それでは、この後書斎に向かい、勉強会を開きましょう」


 紫音の提案によって、俺たちは書斎に向かうのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る