第31話 消滅の光【ガルフェン視点】

 フロンディア王国、王城。

 広場に足を運んだガルフェンは、天に集う眩い光を見た。

 あれこそが聖剣の輝き!


「勇者本人が来なかったことは後で問いたださなければなるまいが、今は構うまい! あの光によって邪神や魔獣は全滅する。その栄誉は全て我がものだ!」


 当然、アルスに向けた誓いが嘘であったガルフェンは、恥じることなく大声でそう叫ぶ。

 歓喜の表情を浮かべるガルフェンのもとに、純白の光は降り注ぐ。

 それによって魔獣や邪神は消えさ――



「うぎゃぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」



 ――瞬間、言葉に言い表せないような痛みがガルフェンを襲った。

 細胞一つ一つが焼き尽くされていくような、そんな感覚。

 この場にいるうち、ガルフェンや大臣を含む数名が似た現象に遭っていた。

 だが、そのなかでもガルフェンの痛がり方は飛びぬけていた。


(熱い! 痛い! なんだこの痛みは! 何だこの痛みは!)


「ぐわぁぁぁあああああああああああ!」


 痛みが強すぎて思考がまとまらない。

 ガルフェンはただただ、永遠の痛みに苦しめられた。



 同じ現象は世界各地でも起きていた。

 特にひどかったのは、各国の宮殿。

 勇者追放に同意した者たちは、一様に痛みを受けていた。



「ぐわぁぁぁあああああああああ!」

「ぼげぇぇぇえええええええええ!」

「ぎゃぁぁぁあああああああああ!」



 細胞だけでない。

 心の奥底から否定されていくような、精神的苦痛まで押し寄せてくる。

 それは彼らが過去に冒していた罪を懺悔する時間でもあった。

 自らの行いを悔い、これからは他者のために生きようと誓うことができた者から、徐々に痛みが引いていく。



 しかし、ガルフェン王の痛みが引くことはなかった。

 常に世界のトップに君臨してきた彼に、他人を思いやる気持ちは一切なかったから。

 この状況においてもなお、そのままであり続けた。



「ありぇんんん、なんだ、これは……! どうして、どうして我がこんな目にぃぃぃぃぃぃい」



 断末魔の悲鳴が響き渡る。

 やがて世界中で、ガルフェンを含む数百もの人々が、断罪の光に呑み込まれて消滅していく。

 それと時を同じくして、邪神と魔獣の完全消滅も確認された。



 かくして、尊い犠牲がありながらも、この世界には再び平和が訪れたのだった。

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