第12話 盲信 ②

 しかし数日後、ガルフェンの耳に飛び込んできたのは驚くべき報告だった。



「なに!? 派遣した騎士が魔獣によって半壊しただと!? いったいどういうことだ!」

「そ、それが、本来ならば1体、多くても2~3体で出現するのが魔獣という存在ですが、今回はなぜか100体近くが群れになっていたとのことです」

「なにっ!?」



 魔獣との戦闘における基本は、多くの騎士が剣や魔法で魔獣を食い止め、最後には神聖力の使い手がトドメを与えるというもの。

 二桁にも及ぶ魔獣との戦闘など、中隊規模では想定していない。

 エネルギーが瞬く間のうちに切れ、後は蹂躙されるのみだろう。


 そう側近は告げていた。



 なぜ、こんなことになったのか。

 戸惑うガルフェンに対し、側近は言う。


「魔獣をせん滅するには、あと10人は神聖力の使い手が必要だとのことです。王都から派遣してほしいと言っていました」

「10人だと!?」


 今、騎士団に神聖力の使い手は20人しかいない。

 その半分も辺境の地に向かってしまえば、ここを守る人材がいなくなる。


 それだけは許可できない。

 そのためガルフェンは言った。



「ならぬ! 神聖力の使い手を王都から遠ざけるわけにはいかん!」

「ということは、援軍は――」

「当然、0人だ。自らの実力不足を棚に上げるような責任転嫁など許さぬ。与えられた任務を遂行せよ!」

「――では、そのようにお伝えいたします」



 外に出ていく側近を見ながら、ガルフェンは自分の選択が正しいと信じていた。

 騎士団の者たちはきっと、邪神が討伐したことによって平和ボケをし、対処する力を失っていた。

 そうだ。この危機を乗り越えることができれば、騎士団はさらなる成長を遂げるだろう。

 自分はそれを期待しているのだ。



「そうだ。これが正しいのだ。勇者がおらずとも、この国は……我が楽園は平穏でなければならない!」



 ――だが、それからさらに3日後。

 騎士たちは再び魔獣殲滅に挑むも、10体を討伐したところで完全に敗北。

 複数の死傷者を出しながらも、王都に帰還した。


 それによって、進行を進める魔獣たちが、幾つかの村や町を蹂躙したとの報告が入ってくるのだった。


「陛下、どう対応いたしますか!?」

「このままだと、魔獣の手が王都にまで迫りますぞ!」


 側近たちがガルフェンに意見を求める。

 しかし、


「ありえぬ、ありえぬ、ありえぬぞ……!」


 ガルフェンはその結果をとても信じることができなかった。

 騎士団の怠慢だと、判断することしかできなかった。


 ここで何らかの行動を起こしておけば、何かが変わった可能性がある。

 しかしガルフェンが選択したのは、国の実力者を王都に待機させておくことだった。


 同様のことが、フロンディア王国だけでなく周辺諸国にも発生していく。

 その瞬間から、世界は滅亡への一途を辿ることとなった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る