優しさを忘れがちな世界で生きるからこそ、響く物語

主人公(僕)と悪魔(君)との、何気ないやり取り。
生態こそ違えども、ともに感情豊かな心の持ち主であることは変わらない。

優しさを享受できなかった僕と、咎に塗れて優しさを忘れかけていた君との出会い。そっと触れた手のぬくもりが、互いの人生を大きく狂わせる。

読みやすく丁寧な文章で綴られる彼らのやり取りは、時にシュールで、時に軽妙で、時に温かい。

どれだけ時間が経っても、離れていても、彼らの気持ちは変わらない。
ラストシーンは、読み進めた読者の願いを体現した心温まるものとなっていると思う。

我々が生きる現世は、世の中の仕組みも人間関係も日々複雑化しており、その中で必死に生きようとすれば、知らず知らずのうちに優しさや温かさといった感情を忘れがちである。
そんな気ぜわしい世界で生きているからこそ、この物語の優しさが心にすっと溶け込むのだろう。皆さまもぜひ一読願いたい。

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