学生時代の失恋を引きずって、就職後も適応障害。地元に帰って回転寿司屋で働くフリーターの話。
実際、東京のIT企業で福井とか富山とか。
日本海側に帰っていった若者を数人見てきたので絵空事とは思えなかったし、文章も読みやすく、心情にも共感できた作品でした。
キャッチとタイトルも、「あー。。。」と。
気持ちよく回収されて、満足です。
どうしようもないぐらいドン底だなぁと、結末を気にしながら読んでいましたが、ハッピーエンドで、ほっこりするお話でした。
個人的には、異世界転生なんかするよりは、こういったリアルに近い、身の丈を模索する成長と、周囲の人とのつながりの見えるお話が好きです。
それなりに幸せって見つかるよね、と。
一回都会に出たから分かる、地方のよさが出てましたし、とてもおもしろいヒューマンドラマでした。
ずいぶん前に読み終わっていて、てっきりレビューを書いたと思っていたのに書いていませんでした。
とにかくお寿司がおいしそうだし、傷ついて、ちょっと生きる目的を失ってしまった主人公が色々悩んだりぶつかったり、誤解したりしながら自分を取り戻していく話です。みんながとにかく優しい。人間関係に悩んでいる人には、寄り添ってなぐさめてくれるような小説です。青春要素もあるし、ほんのりとした恋愛要素もあるし、思わず「ご自分のことですか?」ってきいてしまったほどリアリティーにあふれています。
おいしいものときれいな風景と、そこに生きる人たち。
びっくりするほど大きな感情の動きも派手なアクションもないです。けど、ページをめくる手が止まらなくなります。これを読み終わってしばらくたつのですが、いまだに、「次に旅行するときは富山にしよう。お寿司食べよう」思ってしまうほどの印象を残してくれる小説です。
東京のITベンチャーを適応障害で辞めた修二は、地元である富山に帰り、寿司屋でバイトを始める。その曲者ぞろいの職場で生まれる、人と人との関わりの物語。
冒頭のサーモンの脂が「キラリと光る」というところで一気に引き込まれました。
とにかく、全ての描写が丁寧です。冒頭の食材や調理の描写も臨場感がありましたし、情景や心理の描写も本当にその場の空気や人物の複雑な胸の内が伝わってきました。ひとつひとつにリアリティがあります。
悩み迷い葛藤し生きようともがく物語、というと非常に重たく感じますが、読んでいて負担はありません。それどころか、至るところにユーモアを感じ、クスッとしてしまうことも多かったです。
映画のようには見えない日常でも、他者との関わりを通し、人の中には様々な感情が生まれています。それはまさしくドラマなのだと、本作を読んで強く感じました。
東京のITベンチャーを適応障害で退職した主人公は地元に戻り、お寿司屋さんでアルバイトをして生計を立てることになります。
本作は、お寿司屋さんにより繋がる縁を描いた心温まるヒューマンドラマだと思います。
ところで、少し偉そうなレビュータイトルに感じられたら申し訳ございません。ですが、この絶妙な魅力を広くお伝えしたく、あえて書かせていただきました。
まず、タイトルが素敵ですよね。
「イカんせん、貧乏でスシ」
「イカ」で「スシ」なのです!
主人公は作中で、様々な事件に遭遇します。
中にはハラハラしてしまうような問題にも直面するのですが、どこかユーモアを感じさせる言葉選びと、愛嬌のあるキャラクター達により、重苦しくなり過ぎずに読める点もとても魅力的でした。
また、日々の業務の描写がとてもリアルです。ヒューマンドラマ好きの方にはもちろん、馴染みのない業界の日常を覗いてみたい、好奇心溢れる方々にも大満足いただけるのではないでしょうか。
作者様のセンスが光るこちらの作品を、ぜひ多くの方にお読みいただきたいです。