日常を丁寧に綴ることで描き出されるドラマ

東京のITベンチャーを適応障害で辞めた修二は、地元である富山に帰り、寿司屋でバイトを始める。その曲者ぞろいの職場で生まれる、人と人との関わりの物語。

冒頭のサーモンの脂が「キラリと光る」というところで一気に引き込まれました。
とにかく、全ての描写が丁寧です。冒頭の食材や調理の描写も臨場感がありましたし、情景や心理の描写も本当にその場の空気や人物の複雑な胸の内が伝わってきました。ひとつひとつにリアリティがあります。
悩み迷い葛藤し生きようともがく物語、というと非常に重たく感じますが、読んでいて負担はありません。それどころか、至るところにユーモアを感じ、クスッとしてしまうことも多かったです。
映画のようには見えない日常でも、他者との関わりを通し、人の中には様々な感情が生まれています。それはまさしくドラマなのだと、本作を読んで強く感じました。

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