神話と歴史がまだ一つだったころの物語です。
薬屋の娘フィルメラルナ・ブランは、「神妃」に出会ってしまうのです。
神に選ばれその力を授けられているという「神妃」と出会い、気を失ってしまう。そして、つぎに意識を取り戻したとき、フィルメラルナの額には「神妃」の証である文様が刻まれていました。
突然に神の力を授けられてしまったフィルメラルナ。彼女は運命に押し流されるように神妃となることを強制されます。
一晩にして彼女は巨大な力を与えられたのですが、失ったものも大きかった。まるで幽閉されるような生活。無理やり決められる婚約。そして、少しずつ明かされる先代神妃イルマルガリータの狂気。そして、神の力を利用しようとする人間たちの暗黒の歴史。
神話とまじわる暗黒の歴史の世界で、運命に翻弄され、それでも真実を見つけようとあがいた一人の少女の物語。彼女が見極めた真実と、彼女が最後に下した選択。どうぞ、あなたも目を凝らして確かめてください。
父親と薬草屋を営んでいるフィルメラルナは、薬を届けに行った教会で、神に選ばれた聖女『神妃』と出会ってしまう。そして、意識を失ったフィルメラルナが目覚めたとき、その額には神妃の証である蔦の聖痕があらわれていた。
突如『世界』を背負う聖女となってしまったフィルメラルナ。神妃をめぐるいくつもの思惑や陰謀に翻弄されながらも、不可解な失踪をとげた前神妃イルマルガリータに導かれるように、彼女は絡みあった謎をひとつひとつ紐解いてゆく。
ファンタジー好き、ミステリー好きはもちろん、1話1話が短いので、まとまった時間をとれない方にもおすすめ。壮大な世界観で綴られる、謎に満ちた神秘の物語です。
ある日を境に、神が選んだという聖女「神妃」になってしまったフィルメラルナ。
薬草屋を営む父と暮らす平凡な娘だったはずのに、いきなり聖なる存在に担ぎ上げられて。しかも前の神妃は不可解な失踪を遂げている。
神妃の務めをこなしつつ、フィルメラルナは絡まった蔦をほぐすように謎を解き明かそうとするのですが……。
アイデンティティの危機に戸惑いつつもそれを受け入れようとするヒロインの心がとてもリアルに伝わりました。蒼白い月の光を背景に彼女が運命に立ち向かう姿は神秘的。
失われた記憶、隠されたメッセージ。ミステリ好きならわくわくする仕掛けが読者の心を掴んで離さない、謎解き要素たっぷりの恋愛ファンタジーです。
唯一神のいる世界。
神の遣わす神妃。
世界を流れる神脈。
神脈が乱れるとき、世界は災害、戦争、混乱に陥る。
常に乱れを正さなくてはならない。
神脈を正せるのは、蔦のしるしをもつ神妃ひとりだけ。
神妃に歴史上知られていないエラーが発生します。
蔦のしるしは神妃が死ぬと、どこかに生まれてきた誰かの赤ん坊に
受け継がれるはず。
なのに、主人公フィルメラルナは17にして、現神妃のイルマルガリータから
蔦のしるしを継承し神妃になってしまう。
押し付けられた? なぜそんなことに。
前神妃イルマルガリータが仕組んだものだと思われるけれど。
上に示した設定だけでもすさまじい。
世界を丸っと創造しています、コノハナサクヤさん。
本作はハードボイルドっぽいなと感じました。
謎を追って、人に話を聞きに行く。
フィルメラルナが真相にたどりついたとき、世界はひっくりかえります。
神妃という世界のバランスを守る巫女のような役割が存在する中世ファンタジー世界の物語です。
主人公フィルメラルナはごく普通の薬草屋の娘でしたが、あるとき薬を届けに行った先で神妃イルマルガリータと出会い、そのままなぜか意識を失ってしまいます。
目が覚めたときには神妃の証である蔦の紋様が額に現れ、神殿騎士エルヴィンに神妃として神殿に連れていかれたのでした。
その後、周囲の事情を聴いてわかったことは神妃イルマルガリータはすでに行方不明になっていて死んでいる可能性があるということ、本来は新たな神妃は新生児が選ばれるはずであるのに、十七歳の少女である主人公に神妃として選ばれてしまったという事実でした。
さらに姿を消したイルマルガリータが残したメッセージが彼女を導いていき、なぜ自分が神妃になったのか、謎が少しずつ明かされていきます。
謎解き要素、恋愛要素もあるファンタジー物語が筆者さんならではの荘厳な文体で描かれています。
また健気なヒロインが過酷な運命に巻き込まれながらも、それと向かい合おうとする姿が繊細に表現されています。
一風変わった恋愛ファンタジーが楽しみたい方にはお勧めです。
「コノハナさんの作品ってどんな作品ですか?」と問われて一番に思うのが、やはり気品でしょうか? 文体に品がにじみ出ているのですよね。凛としたような文章で読みやすく、読む者の心に飛び込んで深い印象を残す。品のある文章というのは目指してもなかなか書くことが出来ないのではないかなと思います。それが第一の特徴かなと。
ヒロイン、フィルメラルナもまたその物語を象徴するような美しい女性なのですね。ここでいう美しいとは見た目の美しさではありません(勿論見た目も美しいですけれど)
高貴な百合の花が咲いたような佇まいとまっすぐな心。自身に降りかかる悲劇を乗り越えてなお美しく咲く姿に感銘した人も多いはずです。
作品の持つ雰囲気がとにかく潔く、心地いい。それはやっぱりコノハナさんの持つセンスと筆力ではないかなと思います。
物語はフィルメラルナが世界で唯一無二の存在である神妃として神殿に迎えられるところから始まります。神妃とは一体どのような存在か。時折チラつく、前神妃イルマルガリータの影。彼女は一体どんな人であったのか。物語は進むにつれて深く広く展開していきます。
大きな謎がいくつか仕掛けられていまして、そこはまさにミステリックファンタジー。読みながら推理してああでもないこうでもないと思考を巡らしとても楽しい時間を過ごさせて頂きました。
力強く美しい文章と物語の抱える謎。
貴方も歴史の目撃者になりましょう!
ただの町娘だったフィルメラルナは薬を届けようと教会に訪れたところから運命が大きく変わります。
騎士がやってきて半ば強引に神殿に閉じ込められてしまうフィルメラルナ。
父親と離れ離れになり、何とか元の生活に戻る事を願う彼女。
しかし、それを許さない思惑や勢力や陰謀が渦巻いている。
果たして彼女は元の生活に戻れるのでしょうか。
大作で読み応えありました。
登場人物も全員が個性豊か。
残忍なイルマルガリータ。
フィルメラルナを守るエルヴィン。
エルヴィンに嫉妬丸出しのアルスラン。
フィルメラルナに怯えている侍女のジェシカ。
マイペースでどこか達観しているヘンデル。
そして重要なユリウス王子とミランダ王女。
なぜフィルメラルナが理不尽な目に合うのか。
少しずつわかっていく過程は圧巻です!
読めばひたすら健気なフィルメラルナを応援したくなります。
どんでん返しもある大作異世界ファンタジー、大満足でした。
神王国ロードス。そこには神妃と呼ばれる存在がいました。
神妃とは、神の分身としてこの世に遣わされた少女であり、世界に安定をもたらす存在。それが亡くなると、世に生まれてくる赤子の中から次の神妃が誕生し、それを国と教会が保護する。それが、遥か昔から続けられてきた。
というのが、本作開始時の世界観。しかし始まって早々、これが崩れてしまうのです。
物語の主人公フィルメラルナは、十七歳の町娘。前述の神妃とは、何の関わりもない人生を送ってきました。しかしある時、彼女の額に神妃の証である紋章が現れたことにより、その人生は一変。捕らえられ、告げられたのは、先代の神妃が失踪したこと。そして、自らが新たな神妃になったという事実でした。
神妃の失踪というのはもちろん、十七歳にして神妃になるというのも前代未聞。この事態に多くの者が戸惑うのですが、もちろん一番戸惑っているのは、神妃となったフィルメラルナ本人です。
神から遣わされた存在なんて聞くと、どれ程素晴らしいものだろうと思うかもしれません。しかし先代の神妃は、その権力を使い、非道な行いを数多く行っていたとのこと。
そしてフィルメラルナは神妃となったことで普通の町娘としての自由をなくしたばかりか、どういうわけか、見知っていたはずの人々から、彼女の記憶が消えていきます。それはまるで、フィルメラルナという一人の人間が、神妃という超常の存在に乗っ取られていくかのようでもありました。
神妃とは何なのか。それに翻弄される人々はどうなってしまうのでしょうか。
そして全ての真実が明らかになった時、最後に残るのは何なのでしょう?
神王国に住む、フィルメラルナ。彼女はどこにでもいる、ただの町娘のはずだった。
しかしある日、額に聖痕と呼ばれる印が現れたことで、人生が一転する。それは『神妃』と呼ばれる特別な存在であることを現す、聖なる証……いえ、フィルメラルナにとっては、ある意味呪いなのかもしれません。
特別な存在となってしまったフィルメラルナは神殿へと連れて行かれ、神妃としての特別な扱いを受けますが、そのせいで愛する父とは離ればなれに。
訳のわからぬまま神妃になってしまったがばっかりに、自由と大切な人を奪われ、窮屈な生活を余儀なくされて。
神妃が特別な存在と言うのは分かりますけど、これはいくらなんでもあんまりです! なんの心の準備もできないまま今までの生活を失ったフィルメラルナが、どれだけ辛い思いをしているか。
けどこのお話、悲しいだけではありません。
そもそもフィルメラルナに聖痕が現れたのは、先代の神妃が行方不明になったから。
いきなり神殿に連れてこられて、最初は周りに警戒心を抱いていたフィルメラルナですが、信頼できる協力者を見つけ、先代神妃の失踪の真実を追っていく。
神妃に纏わる設定が非常に丁寧に作られていて、過酷な運命、残酷な歴史が生々しく描かれると共に、過酷な運命に翻弄されながらもそれに立ち向かうフィルメラルナが、力強く描かれています。
ハイ・ファンタジーが好きな人に是非おすすめ。
何度挫けるも、その度に立ち上がる健気なフィルメラルナの奮闘を、見守ってあげてください。
ごく普通の町娘だった少女が、突然世界を正す力を持つ『神妃』として崇められる。
これは、心ときめくシンデレラストーリーではありません。
謎が謎を呼ぶ、ファンタジックミステリです。
主人公・フィルメラルナは生活も家族も全て失った上、前神妃・イルマルガリータの遺した思惑に翻弄され、大きな運命の奔流に呑まれていきます。
イルマルガリータはどこへ消えたのか。何を為そうとしていたのか。フィルメラルナに託された遺志は何なのか。
一つヒントを掴んだら、また一つ謎が増える。
先が気になって、ページを繰る手が止まらなくなること間違いなしです。
初めは自分の立場を受け止められずに戸惑っていたフィルメラルナですが、少しずつ周囲に理解者を作り、『神妃』としてではなく彼女自身の意思で、運命と向き合っていきます。
イルマルガリータの死の真相を追うごとに、明らかになる彼女の知られざる姿。
全ての謎が明らかになった時、フィルメラルナを待ち受けるのはどんな真実なのでしょう。
ラストまで目が離せません!
神王国に住む十七歳の町娘。
薬を届けに行った教会で、意図せず神妃と出逢う。
主人公の町娘の額の聖痕。
神妃イルマルガリータの失踪。
エルヴィンに連れられた神殿で、神妃としての儀式を受けるフィルメラルナだが、父親が囚われ、イルマルガリータが殺害され、一体誰が何のために罪を犯したのか、自分ができることは何なのか、苦悩と葛藤を繰り返しながらも、神妃としての儀式を果たしていく決意をする。
作者様が丁寧に創りあげた独特の世界観。
ミステリー要素を含む神秘的な異世界ファンタジー。
「最後の被験者」と呼ばれた少女は真の神妃になれるのか?
この神王国は、神妃フィルメラルナによりこれからどのように変化していくのか。
散りばめられた伏せんがどのように回収されていくのか、ラストが楽しみです。
(第79話 記憶の改竄拝読後のレビュー)
『神妃』とは何か。
古の世界で果てなき争いを繰り広げていた人々は、唯一神『リアゾ』に平和を祈ります。
リアゾは願いを聞き届け、自分の分身として遣わした少女を守護する共通の目的をもって、人心をまとめ上げる道を開きます。
神妃の額には『蔦の聖印』が刻まれ、長い歴史の中では、何度となく入れ替わってきました。
町娘のフィルメラルナは、十七歳にして突然額に聖痕が現れて、『神妃』として神殿に連れていかれてしまいます。本来は赤子の時にその印が現れて、幼い頃から神殿にて育てられるのが今までの常識。ところがフィルメラルナは例外として、様々な『謎』の中に放り込まれてしまいます。
前神妃のイルマルガリータはどうなったのか?
周りの人々は、果たして敵か味方か?
唯一家族であった父親との絆も絶たれて、始めのうちフィルメラルナは孤独に苛まれます。
けれど、持ち前の真っ直ぐな性格を糧に、暗い影を落とす神妃の謎を解いていく決心をするのです。
そんなフィルメラルナを支えてくれるのは誰か。
美しい神殿騎士卿か。従騎士か。王宮の王子と王女か。歴史棟の目録士か。
多くの謎は、神の与えたもうた試練なのか?
平和慣れした人々の欲が生み出した負の産物なのか?
彼女が辿り着く謎の先に、果たして世界の平和はあるのでしょうか。
どうぞみなさんもご一緒に、『神妃の謎』に迫りましょう!
蒼い月の夜に、神殿に薬を届けに来た主人公は、現神妃と出会う。神妃とは、神脈を正すことで世界に秩序をもたらす存在で、その額には蔦の紋章がある。国を統べる王室とは犬猿の仲だが、国を治める王室と、世界の秩序を守る神妃では存在意義が違う。主人公を見た現神妃は言った。
「最後の検体が来たわ」
主人公が目覚めると、父が神殿の使者と争っていた。しかし、あえなく主人公は神殿に連れてこられ、神脈を正す儀式に臨むことに。この大役を終えて、本物の新しい神妃と見られるようになっていく。それと同時に、前神娘が外見は美しかったが、中身は悪女だったことが判明する。本当に現神妃の主人公を認めるか。その問題に終止符を打ったのは、前神妃の首が神殿にもたらされたことだった。
神妃となった主人公は、父親と接見するが父親は主人公を覚えておらず、主人公が暮らしていた場所にも、主人公を知る者がいなくなっていた。そんな中、主人公は、新しい神妃として、公にされることになった。皆の前に神妃として立った主人公の前に、神妃解放党の連中が乱入し、一時騒然とする。
主人公は窮屈な神殿を抜け出して、幼馴染に出会う。幼馴染は主人公のことを覚えていたらしく、話しかけてきたが、主人公は神妃として神殿に帰るしかなった。
前神妃が発狂したようになったという蒼い月と神妃の関係。
美しき前神妃が行っていた非道な行い。
そして、主人公を取り巻く騎士やメイド、歴史棟の魔術師。
果たして、本当に前神妃は死んでしまったのか?
どこか含みのある面々の思惑とは?
是非、御一読下さい。
とても綺麗だけど残酷な、神話のような世界観が素晴らしいです。
さらにこの物語を楽しませる軸になるのが、序盤から見せる様々な謎です。
なぜ平凡な村娘だった主人公のフィーナが突如として聖女になってしまったのか
なぜ神妃だったイルマルガリータが失踪したのか
話が進むにつれ、謎はさらに深まっていきます。
なので、いったいどうなるのか、謎の答えは何なのかが気になって、先へ先へと読者を引っ張っていく力のある作品です。
いやしかし、フィーナが不憫というか、普通の人なら耐え切れない状況でも人の道を外すことなく耐えている彼女はすごいです。