登録
受付嬢が来るまで、クレアさんにギルドについて話を聞く。
「へぇ、じゃあパーティー名は、自分達で考えるんじゃなく、ギルドに付けられるんだ?」
「そうよ、で、うちのリーダーの二つ名が朱鳥(あかどり)だからパーティーの名前も
「二つ名?」
「そ、これもギルドが着けるのよ、ちなみに私は奇蝶(きちょう)と呼ばれてるわ」
「きちょう?」
「私は幻を見せる幻影魔法が得意なの、その魔法を使うときの魔力光が、蝶みたいに見えるからだって」
「二つ名かぁ」
「あなた達なら、直ぐに二つ名位貰えるわよ」
「えぇ?そうかな?」
「だって、その女の子でさえ、英雄クラスなのよ?常識はずれも良いところだわ」
クレアさんがエニを見ながら、呆れたように笑う、当のエニは興味が無さそう。
「そう言えば、クラスって?」
「えっと、冒険者のランクについては聞いてる?」
「いや、まだ」
「じゃあ、それと一緒に説明を……」
クレアさんが続けようとした時、受付嬢さんが呼びに来た。
「お待たせしました、登録手続きの準備ができました!」
「じゃあ、続きはアイナにお願いしようか」
今更ながらに受付嬢さんが、アイナという名前と知った、そう言えば聞きそびれていたな。
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クレアさんと一緒に、受付嬢さん改めアイナさんの待つカウンターへ行く。
「お待たせしました、あら?何でクレアも一緒なの?」
「さっきのお礼に、ギルドについて教えていたの、パーティー名や二つ名については教えたわ」
「そう、わかった、じゃあ先に鑑定だけ済ませましょう」
「鑑定ですか?」
「はい、その人の大まかな能力を調べるんです、10等級~1等級があります」
「まぁ、大体の強さって思えばいいわ、もちろんそれが全てじゃあないけどね」
「なるほど」
「では、えっと……」
「あ、すいません、タクトです」
「こちらこそ名前を聞かずに、わたしはアイナです、よろしくお願いしますタクトさん、では、この水晶に手を置いてください」
「はい」
言われた通りに水晶に手を置く、マジックアイテムってやつかな?淡く光だしやがて色が変化する。
「す、すごいです!タクトさんは4等級の力を持っているんですね!?」
「それって、そんなにすごいんですか?」
「すごいわよ!今居る二つ名持ちは、みんな4等級以上なのよ?それもいくつもの死線をくぐり抜けてやっとよ!?それを登録初日でなんて!」
クレアさんの勢いが止まらない、どうやら二人の反応でかなりすごいだけはわかった。
「で、では、次は……」
「わたくしがお願いします」
アイナさんが視線を動かすと、メロウが前に出てきた、メロウは魔法がすごかったし、これで俺の力の指標がやっとできるな。と、思ったが。
「あ、あれ?おかしいですね?」
「どうかしたんですか?」
アイナさんが困っていた、何かトラブル?
「鑑定が出来ないんです、壊れちゃったんですかね?」
「壊れた?……」
「うーん、念のため、他の方もお願いできますか?」
「クロノ」
「畏まりました、タクト様」
クロノに促し、鑑定を試みるがやはり鑑定はできず、どうやら本当に壊れてしまった様子。
「困りましたね、今使えるのはこれしか……」
「あの、鑑定が出来ないと、冒険者になれないんですか?」
「いえ、登録はできます、鑑定は後からでも出来ますから、鑑定はあくまでも自分の正しい力量を知って貰うためですから」
「それなら大丈夫じゃないかしら?タクトはS級で、あの女の子は英雄クラスだもの」
「確かにそうね、なら、鑑定は後日任意で受けてください」
「はい」
く、またしても指標が分からない。
「さて、では、冒険者のランクについてご説明します」
冒険者ランク、とりあえずはこれを、基準にするしかないか。
「まず冒険者は登録時には、皆さんランクFからスタートして頂きます」
「あれ?ランクって10からじゃ……」
「それは、強さのステータスランク、今のはギルドに登録した冒険者としてのランク」
「うっ、ややこしい」
「冒険者としてのランクはF~SSS(トリプル)までです、といっても実質、SS(ダブル)までですが……」
「今のギルドでは、SSS(トリプル)なんて居ないのよ実力的に」
「えっ?じゃあSSS(トリプル)にしか出来ない依頼はどうするの?」
「そんな依頼、魔王討伐ぐらいよ?そんなの勇者様がやることよ!」
なるほど、じゃあ勇者は実力がSSS(トリプル)なんだな。
「次は、クラスについてですね、クラスは冒険者ランクSS(ダブル)以上の方に付けられる物です」
「SS(ダブル)以上、SSS(トリプル)未満って所ね」
「それぞれクラスは、英雄、伝説、神話に別れています」
ふむ、冒険者ランクまとめるとこんな感じ?
SSS(トリプル)
↓
神話クラス
↓
伝説クラス
↓
英雄クラス
↓
SS(ダブル)
↓
F~Sランク
なるほど、目指すはとりあえずSS(ダブル)かな。
「次は、クエストについて説明しますが、大丈夫ですか?」
「はい、お願いします」
「と言っても、クエストはあまり説明する事はありません、掲示板に貼られているものは、登録していただければ、誰でも受けられます」
「ただ、それぞれに推奨の冒険者ランクがあるわ、それを参考に受けた方が良いわね」
「推奨ランクが高いほど、危険になりますから……」
「大抵早死にする奴は、お金に目が眩んで、推奨ランクの高い物に飛び付いた奴よ」
「わかりました、気を付けます」
まだ自分の強さもはっきりしないしな。
「では、説明は以上になります」
「ありがとうございました、クレアさん、アイナさん」
「いえ、いえ、仕事ですから」
「本当にこんな事がお礼でいいの?」
「はい!」
と、クレアさんにお礼を言っていると、クレアさんの後ろから、先ほど重大だった、ケインだっけ?が近づいてきた。
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ケインさんの方を見ていると、視線に気づいたのか、クレアさんが振り返る。
「ケイン!まだ起きちゃダメよ!」
「いや、もう平気だ」
先ほどは片目が潰れていて分からなかったが、治った今、イケメンだと分かる、クレアさんと並ぶと正に美男美女だ。
「そっちに居るのが、助けてくれた?」
「えぇ、そうよ、あなたの命の恩人、タクトとその仲間の人達」
「助けてくれてありがとう、俺はケイン、パーティー朱の鳥リーダーだ、よろしくな?」
「あ、はい、よろしくお願いします、タクトです、で、ケインさんを治療したのが、こっちのエニです……」
エニを紹介しながら、前に出そうとするが、直ぐに後ろに隠れられてしまう。
「すいません、人見知りみたいで」
「いや、構わないよ、大体の経緯は聞いて君のお陰ってゆうのは知ってるから」
「いえ、いえ!俺なんて、何も……」
「その通りです、タクト様の慈悲が無ければ、今、貴方は生きていないことを知りなさい」
ちょっとメロウさん、話を大きくしないで!俺は何もしてないから!
「あなたは?」
ケインさんが怪訝そうに目を向ける。
「名乗る名など……」
「メロウ、皆も、ちゃんと自己紹介はしようね?」
このままでは、メロウ達が名前を名乗ろうともしないので、こちらから促す、冒険者として活動するなら、最低限名前は知ってもらった方が良いだろう。
「畏まりました、タクト様、わたくしはメロウです、覚えなくて良いですよ、人間」
「私はクロノ、タクト様に危害は加えないように」
「僕はフェン、勝手に触らないでね?壊しちゃうよ?」
「ん、エニ、タクト様以外、いらない」
と、従者達の何とも言えない、自己紹介を聞いて、俺含めみんな苦笑いだ。
「えっと、皆さんのご関係は?」
「タクト様の従者です」
アイナさんの質問に、メロウが答えるが……
「タクトは貴族なの?」
「いえ、違いますよクレアさん」
「え?でも……」
そうか、従者が居るのは大体金持ちか貴族ぐらいか。
「タクト様、そろそろ宿を探さなくてはなりません」
どう説明したものか困っていると、メロウがナイスな提案をしてくれる。
「そ、そうだなメロウ、宿を探さなくちゃな?じゃあ、すいませんが俺達はこれで失礼します」
そそくさと立ち去る。
「あっ、待ってタクト……」
クレアがタクトを引き留めようとすると、メロウが前に立ちはだかり、小声で言う。
「人間がこれ以上タクト様を煩わせるな」
その放たれる殺気にクレアはそれ以上何も言えなくなる。
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タクト達が立ち去ったギルド内。
「ぷはぁ、死ぬかと思った!」
まるで空気の薄い山の上に居たような感覚に襲われていたケインが、膝に手を付きながら大きく息をする。
「本当に、危なかったわね」
「あのね、クレアのせいなのよ?他人事みたいに言わない!」
「ごめんアイナ、どうしても気になって……」
「まぁ、確かに気になるよな、あんな化け物どこに居たのか」
「えぇ、エニって娘もすごかったけど、メロウって人がヤバかったわ、いつでも私達を殺せるようにしていたわ」
「それだけじゃあねぇよ、後ろに居た老人と少年、あと一歩タクトに近づいたら、確実に俺達はこの世に居なかった」
「唯一の救いは、何故か彼らが従ってる、タクトが友好的な事ね」
三人で顔を見合い、大きくため息をつく。
「やめよう、これ以上考えても気が滅入るだけだ」
「そうね、今は命がある事に感謝しましょう」
「二人は良いわよ、でもわたしはこれからもあの人達の対応をしなきゃいけないのよ!?ギルドカードも渡しそびれちゃったし……」
「まぁ、メグミさんが帰って来るまで頑張るのね」
「うぅ、お腹痛いよ……」
お腹を押さえて机に突っ伏すアイナを見て、笑い会うクレアとケイン。
「そう言えば、何でケインはあんな大ケガをしたの?」
「いっけね、忘れてた!」
アイナの唐突な質問で自分が瀕死の重症だった事を思い出したケイン。
「あ、そうだったわね」
「何せ、その後が濃すぎる内容だったからな、実は街の近くでバジリスクの群れを見つけたんだ」
「バ、バジリスクですか!?単体でもCクラスなのに、群れなら……」
「間違いなくAクラスの案件、しかも大規模の群れだったわ」
「そ、そんな、じゃあ、討伐するには、S以上のパーティーが複数必要……」
「あぁ、だがこの街の戦力はそんなに無い、何てったってメグミさんを除いて、この街一番の冒険者は俺達Aランクパーティー朱の鳥(あかのとり)なんだからな」
「ふふ、残念ねリーダー、この街の最高は私達じゃあないわ」
「あー、確かに協力してくれればな」
「ま、待ってクレア、タクトさん達にそんな力本当にあるの?」
メロウ達の力は鑑定出来なかった、未知数の相手にそこまで期待していいのか、アイナはそれが疑問だった。
「……アイナ、さっきの水晶で私を鑑定してみて?」
「え?うん、でも壊れてるから……あれ?鑑定できる、何で?」
「答えは簡単よ、彼ら、タクト以外は鑑定が出来ないのよ、もっと正確に言うなら、鑑定をすることが出来ないほど強いね、それこそ化け物並みに」
「……マジ?」
「マジ」
素の状態で聞き返すアイナに対し、クレアは呆れながら、どこか遠くを見る目で答える。
その夜、冒険者ギルドからはこれからの事を憂いた、受付嬢の悲鳴が聞こえた。
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冒険者ギルドを出た後、タクト達は宿に来ていた。
「木漏れ日亭、街の人から聞いた宿はここだな」
「はいタクト様、何でも安くて綺麗な宿との事です」
「でも、お金はあるのか?」
「盗賊から抜き取ったものがございます、焼け残りなので微々たる物ですが」
盗賊に襲われた後、いつの間にかクロノが抜き取ったらしい、さすが抜かり無いね。
「さぁ、入りましょうタクト様」
「はぁ、やっと休める」
タクト達が中には入ると、女の子が奥から出てきた。
「いらっしゃいませ!ご宿泊ですか?」
「はい、えっと、二部屋お願いできますか?」
「二部屋ですね、二人部屋、三人部屋、四人部屋がありますけど?」
「じゃあ……」
タクトがエニとメロウで二人部屋、タクトとクロノとフェンで三人部屋を頼もうとすると、メロウが割って入って来た。
「二人部屋と四人部屋をお願いするわ」
「え?メロウ?」
「ちょっと割高になりますけど」
「構いません」
「畏まりました!準備しますのでお待ちを!」
女の子が準備のため奥に行く。
「メロウ?二人部屋と三人部屋じゃあないのか?」
「我ら従者は同じ部屋で寝ます、主であるタクト様と同じ部屋で寝るなど恐れ多いです」
「そ、そうか」
正直一人で寝るのは不安何だが。
「大丈夫です、有事の際は直ぐに向かいます」
「わ、わかった」
顔に出ていたのか、メロウが安全を約束してくれる、いや、俺もそれなりに強いはずだから大丈夫だとは思うけど念のためね。
「お待たせしました、では、二人部屋が銀貨一枚、四人部屋が銀貨三枚で、合計銀貨四枚です、後代表者の台帳記入をお願いします!」
「では、タクト様、私が台帳を記入しましょう」
「頼んだ、クロノ」
クロノが支払いと記入をする、銀貨四枚日本円で四千円位、まあ五人で四千円なら激安だな。
「はい!では、部屋にご案内します!」
部屋は二階、一階には食堂、隣の建物に浴場と至れり尽くせりだな。
「ではタクト様、ごゆっくりお休みください」
「あ、待ってその前にみんなで食事をしよう」
「畏まりました、タクト様がお許し頂けるなら喜んで」
「もちろんだ、これからは極力みんなで食事をする事にする」
何て言うか、従者らしくするのは良いんだが、一人で食事は寂しい。
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メロウ達と食事をしていると、近くの席の冒険者が気になる話をしていた。
「おい、そう言えばお前聞いたかよ、あの朱の鳥がやられたって話」
「あの朱の鳥が?マジかよ、死んだのか?」
「いや、瀕死だったらしいが、たまたま居合わせたすげぇ新人が治したんだと」
「確かにそりゃすげぇな、死にかけを治せるのなんて、ギルド長のメグミさんぐらいだと思ったぜ」
「で、問題は朱の鳥がやられた原因のほうよ」
「原因か、ゴブリンの群れでもあったのか?」
「いや、もっとやべぇ、バジリスクの大規模な群れだとよ」
「おい、おい、冗談だろ?そんなもんどうすんだよ!?」
「とりあえず、近いうち偵察隊を送るらしい、さすがに討伐はメグミさんが戻ってからだろう」
「その前に街に来たら?」
「おしまいだな」
「マジかよ……」
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何か隣から物騒な話が聞こえてきた。
「どうしましたタクト様?」
「いや、何でもない」
「もしやお疲れなのでは?」
「それは大変です!早くお部屋でお休みください!」
クロノの言葉にメロウが過剰反応する、フェンとエニも心配そうに見上げる、心配してくれるのは有り難いが、過保護だ。
「まあ、そうだな今日はいろいろあったし、疲れてるからな寝るとしよう」
話は気になるがメロウ達と二階の部屋に戻る。
「本当に俺が一人でいいのか?」
「はい、ゆっくりお休みください」
「……わかった、じゃあおやすみ」
言葉に甘え一人でベッドに寝転がる、今日は本当に長い一日だった、異世界転移から始まりメロウ達と出会い、遺跡を脱出し、盗賊に襲われ、街に着いてからはギルドで一悶着、ギルドで思い出したがメロウ達はどうやら人間が嫌いらしい、
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タクトの部屋の隣、メロウ達の部屋。
「やっとタクト様はお休みになった様です」
「そうですか、では、もしもの時のために結界を張ってくださいメロウ」
「わかっているわ、クロノ」
「タクト様、疲れてる」
「そうねエニ、ぜひゆっくりお休み頂きたいわ」
「その為には、僕達がタクト様お守りしなきゃ!」
「その通りよフェン、何人足りもタクト様の眠りを妨げるなんて許されないわ」
従者達によって、タクトの眠りは護られようとしていたその時。
カン、カン、カン、カン、けたたましい警報が鳴り響く、それは街に脅威が迫る音。
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