王様

 テントでの一晩が過ぎ朝。


「う、うぅん」


 重い瞼を開けると目の前には、フェンが居た。


「おはようフェン」


「お、おはようございます、タクト様!」


 今日もフェンは元気だな。


「起きるか」


「は、はい!」


 起き上がりテントの外に出る、既にケインさん達は集まって居たのだが、そこには見慣れない馬車があった、というか、昨日俺達が乗っていた馬車が無くなっていた。


「おはようございます、ケインさん」


「あ、ああ、おはよう、タクトくん」


「この馬車なんですか?」


 馬車を指差しながら聞いてみる。


「それがどうやら、俺達の乗って来た馬車らしいんだ」


「え?」


 改めて馬車を見てみる、確か昨日乗って来た馬車はよくある帆馬車と言われるもの、木造で屋根が布で帆を張られた物だった。


 今、目の前にあるのは木造で出来ているが、屋根もしっかりした木の作りであり、細部には鉄で補強がされており、馬車と車輪を繋ぎ目には揺れを抑えるスプリングの様なものも見える。


「明らかに昨日乗っていた物とは別物に見えますが?」


「タクト様、それについてはわたくしからご説明致します」


「あ、メロウちょうど良かった、これは………」


 どうゆう事と聞こうとした所で止まる、なんかメロウが真っ白な神々しい馬連れてた、しかもその馬角生えてない?


「はい、その馬車ですが……」


「うん、ごめんメロウ、馬車より気になる事ができちゃった、その馬?何?」


「近くにたまたま居ましたので連れてきました」


「あ、あ、ああ」


 メロウの説明も気になるが、それ以上に隣のケインさんの反応が気になる。


「ケインさん?どうしました?」


「た、タクトくん、あ、あれは、ユニコーンだ!」


 ユニコーン?それって伝説の?


「ユニコーンって、たまたま居るものですか?」


「いや、少なくとも見た者すら稀なはずだ」


「で、そのユニコーンをどうするんだ、メロウ?」


「馬車を引かせます」


 もう、何処からツッコむべきか。


「おや?皆さんお揃いで」


「クロノか、お前からも……」


 何か言って貰おうと、クロノを見るとクロノも同じ白く神々しい角の生えた馬を連れていた。


「………クロノ、それは?」


「ユニコーンです」


「二頭居ましたので」


「あ、そう………」


 まさかと思いエニとフェンを探す、………良かった、二人は何も連れていない。


「クロノ、メロウ、馬車を改造したのもお前たちだな?」


「はい、タクト様により快適に馬車の旅をして頂きたいと思いまして」


 なるほど俺の為を思ってか。


「うーん、でもなぁ、勝手に改造して良いものなのか?」


「後程ギルドに代金を払わせて頂きます」


「馬は?」


「もう既にギルドに帰しています」


「……なら、問題無いのか?」


 わりとちゃんと筋は通っていたのでいいかと思ったのだが。


「いやいや、良くないよタクトくん、ユニコーンだよ!?伝説の!!」


「あ、はい、そうですね」


 何せ普段から伝説の中の人達に囲まれてるもんで、感覚がおかしくなる。


「メロウ、馬車を引かせるって平気なのか?」


「はい、指示に従うよう調教は済んでいます」


「なら大丈夫そうですね、ケインさん」


「いや、そういう意味じゃなくてな?」


「ケイン、諦めなさい」


 途中から騒ぎを無視して朝食の準備をしていたクレアさんがケインさんを宥める。


「クレアでもだな」


「彼らには常識は通じないわ」


「クレアさん?目が死んでますよ?」


「さぁ、ごはんにしましょう?」


 クレアさんは何かを悟ったらしい。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

「うぉぉ、本当にユニコーンが指示に従うよ……」


 メロウの言った通りにユニコーンは大人しく馬車を引いている、そして何より。


「昨日とは比べ物にならない速さだな、馬車は壊れないのか?」


「はい、各所に衝撃を和らげるサスペンションを施していますので」


 うん、それはこの世界の知識ではなく、現代の知識では?どうやって得たかは聞かないようにしよう。


「タクト様、リンゴ」


「お、エニが剥いてくれたのか?ありがとう」


 エニがリンゴをウサギ方に剥いてくれた、皿にこんもりとなので若干量が多い。


「クレアさん、良かったらどうぞ?」


「あら、いいの?ありがとう」


 隣に居たクレアさんにお裾分けしてみる。


「これは、果物かしら?」


 おっと、この世界にはリンゴは無いのかな?ははは、そんなはずないよね?


「エニ?このリンゴはどこで………」


 手に入れたか、そう聞こうとしたらエニが手から、いや、正確には手に浮かんでいる魔法陣からリンゴを取り出していた、何その魔法!?


「タクト様、エニは万物を生み出す事ができます」


「瀕死の怪我を治したり、もうエニの凄さが止まらないな!?」


「えっと、タクトくん?」


 おう、またクレアさんの目が死んでる、いや、良く見たら他の朱の鳥の人達も同じ目をしていた。


「クレアさん、できればこの事は」


「うん、大丈夫、私達は何も見ていないわ」


「すいません」


 エニにはあまり人前で使わない様に言っておいた。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ユニコーンを走らせること半日、予定より大幅に早く俺達は王都に着いた。


「確か本来はもう一泊野宿のはずだったんだがな」


「まぁ、早く着く分には良いじゃない」


 ケインさんとクレアさんも苦笑いが止まらない。


「この後はどうするんですか?」


「まずはギルドだな、メグミさんから手紙を預かってるんだろ?」


「はい、えっと宛名は王都のギルド長ですね」


「なら、尚更ギルドね、行きましょう」


 ケインさん達の先導の元街を歩く、ちなみにユニコーンは白馬に擬態しているがそれでも結構目立つ。


「おい、あれ本当に馬か?」


「あんな白い馬見たこと無いぞ?」


 などとひそひそ聞こえる、角がなくても異常性は滲み出ているようだ。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

道中目立ちまくり、やっと冒険者ギルドに着いたのだが。


「歓迎じゃないですよね?」


「そうね、騒ぎ過ぎたみたいね」


 ギルドから冒険者と職員が出てきて何事かと見ている。


「ちょっと待ってて、先に私が行って話してくるから」


 ここは勝手知ったるクレアさんに任せる、クレアさんがギルド職員に話をしている間、俺達は馬車で待機。


「やっぱり白馬に馬車って目立ちますね」


「タクトくん、それだけじゃなく、馬車にも注目されているんだ、こんな立派な馬車王族でもないと持って無いからね」


 あー、基本帆馬車らしからね、そりゃ目立ちますよね。


「お待たせタクトくん、話がついたから中へ入りましょう」


 ほどなくクレアさんが呼びに来た、手紙を届けに来ただけなのにえらい騒ぎになった。


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「ようこそいらっしゃいました」


 通されたギルド受付ではデカイおっさんが待っていた、そして後ろでは。


「おい見ろよ、Aランクパーティー朱の鳥だぜ」


「ああ、その後ろについてんのはなんだ?荷物持ちか?」


「いや、どうやら朱の鳥が一目置いてるらしい」


「マジかよ?ランクは?」


「それがFらしい」


「まだ駆け出しじゃねぇか、そんな連中がなんで………」


 いや、一目置いてるもなにもただ道を案内してもらっただけなんだけどね。


「君がタクトくんだね?」


「え?あ、はいそうです」


「遠い所ご苦労だったね、さっそく手紙を預かろう」


 何か優しそうな人だな。


「あ、はい、これを王都のギルド長さんに」


「ギルド長はワタシだよ、ギルド長のベイカーだ」


 目の前に居るデカイおっさんがギルド長だった。


「あ、そうですか」


「ん?驚かないね?」


「はい、イメージ通りでしたから」


 これでただの受付って言われた方が驚くよ、明らかに見た目が歴戦の戦士だからね。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

「ふむ、なるほど……」


 ベイカーさんは手紙を渡すと直ぐに読み始めた、しばらくしてうねりを上げる。


「よし、手紙を届けてくれてありがとう、依頼書に受理印を押せば依頼は完了だよ」


 と、その場でベイカーさんは受理印を押してくれる。


「朱の鳥は話があるので残ってくれ、タクトくん達は宿に案内しよう」


「え?もういいんですか?」


 以外に呆気なく終わり拍子抜けする。


「そうね、タクトくん達は長旅……といってもそんなでもないか……えっと、初めての野営で疲れたでしょ?先に宿で休んでて、話が終わったら私達も行くから」


「はい、じゃあお言葉に甘えて」


 職員の一人が宿に案内してくれると言うのでついていく、まぁ、手紙は渡したし、他にやることもないしゆっくりしよう。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

「さて、朱の鳥はこちらに来てくれ」


 タクト達が居なくなるとケイン達はギルドの奥にある会議室に通されようとしていた。


「じゃあ、そっちはケインとクレアに任せるね」


「ちょっとミリー?あんた達はどこ行くの?」


「わたし達は他の知り合いの冒険者に説明してきます」


 と言ってすたすたと酒場の方へ行ってしまった、普段はおっとりしているのにこんな時だけ早い。

 ミリーを恨みがましく睨みながら、クレアはケインと二人でベイカーのあとに続き会議室へ入る。


 王都のギルド、その会議室には既に二人の先客が座っていた。


「もう用は済んだのかい、ベイカー?」


 一人は老婆の魔術師、かつては王国一の魔術師と言われ、今では王国西部のギルドのマスターに名を連ねている。


「おや?見た事のある顔が居ますね?」


 もう一人は活け好かない優男、東部のギルドのマスター、最年少でギルドマスターになったが、その裏には黒い噂が絶えない、何よりこいつは………。


「確か、弟がお世話になっているギルドの所属でしたよね?」


 こいつは我が儘メイツの兄だ、兄弟そろってろくでもない。


「ふふふ、挨拶も無しですか、いいですねぇそのキレイな顔を歪めたい……」


「レイツ、話を進めたいんだが?」


 王都のベイカー、南部のメグミを合わせて王国には四人のギルドマスターが居る、ちなみに北部にはギルドは無く、その役割は教会が独立して行っている。


「さて、では、メグミからの手紙について話そう」


 ベイカーがかいつまんでファストで起きた事件の顛末を話した。


「にわかには信じられませんね」


 最初から否定してきたのはレイツである。


「あなたの弟さんにも言われたわ」


「弟は僕に似て優秀ですから」


 どの口が言うのやら。


「メグミの手紙にはタクトくんとその従者をSランクに推薦すると書いている」


「ふむ、話が本当なら妥当だね、あたしゃ賛成だよ」


「僕は反対ですね、だいたいそんな人間居るわけないでしょう、居たとして何でまだ駆け出しのFランク何ですか?それだけの実力が有るならとっくにAにはなっているはずです」


「それは、登録したのがついこの間だから………」


「それがおかしいのですよ、なぜもっと早く冒険者になっていないんです?」


「それは………」


「僕が思うに、彼らの自作自演なんじゃないですか?」


「は?」


 あろうことか、自分達で作ったものじゃないかと言い出した。


「考えれば直ぐに分かる事ですよ、千匹のバジリスクの群れなんて、何処から来たのです?」


「あんたはバジリスクの群れが召喚されたと言いたいのかい?それこそ無理だろうよ」


「しかし、そこまで力が有るなら可能では?」


「レイツ、今はそうゆう話をしているんじゃない、話を脱線させるな」


「おや?そうでしたか?これは失礼」


 レイツは悪びれていない様に見える。


「話を戻すぞ、レイツはタクトくん達をSランクにするのは反対なんだな?」


「ええ、Sランクにするなら我が弟を推薦しますよ」


 あいつがSランク?絶対無理だろうよ、と、クレアとケインは心の中で毒づく。


「もしもその方達をSランクにするなら、明確な実績を出してもらいたいものです」


「と言うと?」


「今、ここ王都で起きている二つの問題の解決でどうでしょう?」


「ひっひっひ、そいつあいい、それだけの功績なら誰も文句は言わないさね」


「ええ、我々ギルドマスターですら解決できないのですから」


「ふむ、良いだろう、朱の鳥もそれでいいか?」


「へ?俺ですか?」


 突然聞かれて驚くケイン。


「なんだ?聞いてないのか?メグミは決定権を朱の鳥ケインに委任すると書いてあるぞ?」


 手紙を見せられるケイン、そこには代わりにタクト達への屋敷を用意する事が書いてあった。


「責任を押し付けられた……」


「それで、どうする?」


「………わかりました、承認します」


「よし、では、王都での二つの問題解決をもってタクトくん達はSランクに昇格とする」


 タクト達の居ない間にSランク昇格試験が始まった瞬間である、そしてそれを見つめる影が一つゆらりと消えた。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 一方、ギルドで自分に関わる大きな会議が開かれているとは知らないタクトは、ギルドの職員に案内された見るからに高級な宿に来ていた。


「本当にこんな所に泊まれるのか」


「はい、ギルドの方が宿泊費を持つそうです」


 宿の主人の話を聞き驚く。


「ええ!?ぜ、全額ですか?」


「はい、そのように聞いています」


「そ、そうですか」


 全額、駆け出しの冒険者が一泊でも辛い料金を何日泊まるかも分からないのに全額負担、その意味は何だろうか?


「と、とりあえず部屋に行くか」


「タクト様、私は買い出しに行きたいと思いますがよろしいですかな?」


「ん?良いけど、何を買うんだクロノ?」


「馬車の改築ように少々」


 あの馬車まだグレードアップするんだ。


「分かった」


(ギルドの動向を探って来ます)


(頼みましたよクロノ)


 さて、部屋に行き寛ごうとしたら。


「宜しければ風呂に行かれてはどうですか?疲れが取れますよ?」


「風呂?この宿には風呂が有るんです!?」


「ええ、当宿自慢の大浴場です、今の時間なら貸し切りですよ」


 この世界に来て久しぶりの風呂!これは入るしかない!


「よし!じゃあ、クロノは居ないから、フェン一緒に入ろう!」


「え、ええ!?た、タクト様それは……」


「フェン」


「い、いやいや、メロウ、さすがにこれは……」


「…………」


「わ、分かったよ、行けばいいんでしょ!行けば!」


 何か無言の圧力があったな、なんだ?何かあるのか?……ハッ!まさかフェン、お風呂が苦手なのか?あー、子供ってお風呂嫌いが多いよななぜか。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

「おぉ!広いな」


 宿の自慢だけあって、かなりの大きな風呂があった。


「久しぶりなだけに嬉しいね、この世界基本シャワーか、水浴びだから」


 シャワーもぬるま湯がチョロチョロ出るくらいだし。


「ひ、ひつれいします」


「なんて?」


 なぜかフェンがガチガチに成りながら入って来た。


「ほら、大丈夫だからおいで」


「ひゃ、ひゃい!」


「………フェン、何でタオルを体に巻いてるんだ」


「ふぇ!?いえ、あの、その」


 ………え?いや、まさかだよな?その場合とても今まずい状況じゃない?


「す、直ぐにタオル取ります!」


「ま、待てフェン!その前に聞きたいことが………」


 聞こうとした時には既に遅く、露になる少し膨らんだ胸と、付いていない下半身………。


「ふ、フェン、君は、女の子なのか?」


「ふぇ?は、はい、僕は女の子ですよ?」


 ぼ、僕っ娘だと!?


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 風呂場でのチン事の後、体を洗って直ぐに出てきた。


「タクト様ごめんなさい、つい知ってるものとばかり………」


「いや、ちゃんと確認しなかった俺が悪い」


『…………』


「おや?お二人共どうされました?」


 気まずい空気の中クロノが帰って来た。


「ッッッ!ぼ、僕、部屋に戻りますね!」


「あ、ああ」


「どうかされたのですかな?」


「じ、実はな………」


 風呂場での事をクロノに話す。


「なるほど、申し訳ありませんタクト様、伝えていなかった我々の落ち度です」


「いや、フェンにも言ったが確認しなかった俺が悪い、………一応聞くがクロノは男だよな?」


「ふぉっふぉっふぉっ、こんな女が居てはたまりませんよ」


「そ、そうだな、ははは」


 良かった、これで実は美女ですなんて言われたら、人間不信になるわ。


 クロノとそんな話をしていると、ケインさん達がベイカーと一緒に宿に入って来たのが見えた。


「ケインさーん!」


「おー、タクトくんここに居たか、実は折り入って君たちにベイカーさんから依頼があってな」


「依頼?」


「タクト様、宜しければ我々の部屋でお話しされてはいかがでしょう?」


「そうだな」


 場所を変えメロウ達が居る部屋、そこで話し合う事に。


「ちょっと!ミリーどこ行くの?」


「クレア、私達は部屋に行ってるわ、さすがにこんな大人数で行ったら迷惑ですからね」


「え?別に気にしませんが?」


「いえいえ、お構い無く」


 結局来るのは、ケインさん、クレアさん、ベイカーさんの三人。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

「それで、依頼とは?」


 メロウ達従者の部屋にて、片側に俺、クロノ、メロウが座り、反対側にケインさん、クレアさん、ベイカーさんが座っていた。


「ああ、実は王都で緊急の依頼が出ていてな、高位の呪病の治療の依頼なんだが」


「呪病?」


「呪いの一種だ、それが王妃様と王女様に掛けられてな、それを解呪できる者を探している」


 なるほどそれでエニに白羽の矢が立ったと。


「わかりました、とりあえず受けてみます」


「そうか!では、王城には俺が伝えてこよう」


 そう言ってベイカーさんは直ぐに出ていってしまう。


「俺達も行った方がいいんですかね?」


「いや、おそらく明日迎えが来ると思う」


「明日は私達別件で動く予定だから、タクトくん達だけになっちゃうけど」


「大丈夫ですよ」


 王城か、まぁ、メロウやクロノが居るから平気だろう。


 その後、宿でゆっくりして、一日を終えた、ちなみに風呂にはケインさん達と入り直し、フェンとの一件を伝えたら驚いていた。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

翌朝、朝食を食べていると王城の使者が迎えに来た、馬車に乗せられ王城に直ぐに連れていかれる。


「よっぽど切迫しているのかねぇ」


「少し聞いた話によりますと、何でも優秀な治療士を、幾人呼んでも治せる者が居なかったとか」


「へぇ、エニなら大丈夫なのか?」


「うん、タクト、様のため、がんばる」


 エニが両手で拳を作り、がんばるのポーズをする、かわいい。


 程なくして王城に到着する、休む間もなく謁見の間に通され王様に会うことに。


「エシリア王国、テオドール様!御出座!」


 こうして、俺の今後を決める重大な騒動は幕を開ける。

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