会議
新築パーティーの途中、駆け込んできたアイナさんによって、宴は止まっていた。
「無礼者!ここを何方の邸と心得るか!」
「ひっ、ひぃ!?」
宴を止められたか、はたまたバタバタと駆け込んできたからか、メロウが怒る。
「メロウちょっと待って、緊急みたいだから俺達はあっちで食べてよう」
メロウを宥めながら移動しようとしたが。
「い、いえ、メグミさんだけではなく、この場にお集まりの皆様全員にお話です」
メグミさんだけではなく全員に?つまり、俺達とケインさん達朱の鳥、そして元勇者パーティーに話と言うことか?
「タクトくん場所を借りても?」
「はい、どうぞ……」
いつになく真剣なメグミさんに宴処ではないとひしひしと伝わってくる。
「アイナ続けなさい」
「は、はい!つい先程王都から書状が届きました!内容は『魔王軍より宣戦布告あり、王城にて対策会議を行うため来られたし』です」
「そ、そんな……」
「ついに来たわね……」
何故だろう、皆悲壮感に包まれるのだが、俺は違和感しか感じない。戦争に実感がわかないから?戦力的にメロウ達が居るから?違う、もっとこう、引っ掛かるものがある。
「………仕方ないわ今日はお開きにしましょう、明日王都に行きます!」
「はい」
その夜は遅くまで引っ掛かるモノが何なのか、考え続けたが、答えは出なかった。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
翌朝俺達はギルドに集まり、王都に向かう。メンバーはメグミさん、俺達、朱の鳥。
「あれ?ミリアリア達は?」
「昨日夜に早馬で出発しました」
「フットワーク軽いなぁ」
「それが強みなのよ、何処にも所属せず独自に動く、本来の勇者はね」
メグミさんの本来の勇者って言葉に含みを感じるが、俺達はあくまでも冒険者兼勇者である。勇者の方が兼業なのだ。
「うーん、この人数ならうちの馬車で行けるかな?」
元々八人で乗っていた馬車だ、少し手狭になるが何とか乗れるだろう。
「タクト様、もう一台馬車を用意しています」
そう言ってクロノが出してきたのは馬車の荷台だけのもの、馬はいない。
「こちらを我々の馬車に連結して引きます」
「いやいや、引きますって………」
引けるのか?引けたとしても、後ろの荷台はかなり振られるのでは?
「ユニコーンなら、平気でしょう何よりこの提案は……」
「私がしたの」
「メグミさんが?」
「緊急事態だからね、クロノさんにお願いしたの」
「でも、かなり揺れますよ」
「覚悟の上よ、それにこれくらい冒険者ならへっちゃらよ」
若干メグミさんの後ろでクレアさん達が首を横に振っていた。
「と、とりあえず行きますか?」
「ええ、お願いするわ」
ここで話していても時間が無駄に過ぎるだけなので、移動を開始する事にしたのだが。
街の外に出てから後悔した。
「お、おいクロノ?ちょっと速すぎないか?」
「ほっほっほ、舌を噛みますぞ?」
クロノによって改造に改造を重ねた馬車でさえ、上下に揺れるほどの速さで走る。
この分だと後ろはもっと悲惨な状態のはず。
「というか、他の馬車が居たら大変だろ?」
「ご安心下さい、ミリアリア殿達が通行を止めています」
どうやら現在この道は通行止めらしい。
「前の勇者と同じかよ」
「緊急時ですので」
まぁ、仕方ないか?
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
馬車を飛ばしたかいがあって、その日の夕方には王都にはたどり着いた。ちなみに昼は馬車の中で揺られながら食べた。
「メグミさん大丈夫ですか?」
馬車が止まっても出てこないので、心配になり中を覗いてみると。全員床に倒れていた。
「え、ええ大丈夫よ、ただ座って居ると危なかったから床に伏せていたの」
少し青い顔をしながら話すメグミさん。
「いや、それ大丈夫と言わないでしょ?」
ケインさん達はしばらくダメそうだな、リバースしてはいないが、とても立ち上がる事は出来そうにない。
「とりあえず中に……」
「飛竜が来るぞ!場所空けろ!」
「飛竜?」
空を見ると確かに二頭の飛竜、所謂ワイバーンのような手と翼が一体化したものが降りてこようとしていた。
「あれは?」
「あれはギルドが保有する移動手段の一つよ、緊急時にしか使わないけどね」
よく見ると飛竜は客車のようなものを背負っていた。
「難点は最大で四人までしか乗れないことと、人数が増えれば増えるほど遅くなることね」
なるほどだからメグミさんは飛竜を使わず陸路で来たのか。
降りてきたワイバーンには見知った人達が乗っていた。
「おや?誰かと思ったら、タクト達じゃないかい」
降りてきたのはマガリさんとプライムローズのルミアさん、もう一頭の飛竜からはレイツさんと冒険者が一人。
「おぉ!これはタクト様、皆様も来られたのですね!これは心強い!」
「え、ええメグミさんの付き添いとして……」
「何言ってるの?貴方は勇者なんだから、立派なメインよ」
「ですよねぇ」
「ひっひっひ、ここで立ち話もなんだから、中に入ろうかね」
「あ、じゃあ俺達は後から行きます」
「おや?何か有るのかい?」
マガリさんに馬車の中を見て貰う。
「ケイン達じゃないか、どうしたんだね?」
「少し派手に馬車を走らせて、この状況です」
「ああ、なるほどね、ならルミアあんた介抱しておやり」
「はい!」
ルミアさんに任せて俺達はギルドに入れと言うことらしいので、それに従う。
ギルドに入るとカウンターの前で行ったり来たりしている、落ち着かないベイカーさんが居た。
「すまない!通してくれ!」
「おっと……」
それだけではなく、兵士や職員も慌ただしく駆け回っていた。
「ベイカーさん!」
「ん?おぉ!タクトも来てくれたのか!」
どうやらマガリさん達がこの時間に来るのは知らされていたようで、ここで待っていたらしい。
「マガリ達だけでなくタクトも居るとは心強い!」
「なんか大変そうですね?」
「ああ、詳しくは中で話そう」
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ギルドの奥、今回は人数が多いので執務室ではなく会議室に通された。
「それで?今はどんな状況だい?」
席に着いて早々にマガリさんがベイカーさんに訪ねる。
「宣戦布告を受けて対策を話し合うため、急遽五ヵ国会議が決定した」
「五ヵ国会議?」
聞きなれない言葉に質問する。
「ああ、ちょっと待ってろ」
ベイカーさんが席を立ち、戻って来ると地図を広げた。
「これが世界地図だ」
この世界の世界地図始めてみた。大きな大陸がパッと見は四つに別れている。
「よく間違われるんだが、四つではなく五つだ」
そう言って地図の海を差すベイカーさん、よく目を凝らすと海にも境界線が書かれていた。
「ここに海洋国"マーメティア"が有る」
「後はそれぞれ北に獣王国"ガルメティア"、東に帝国"レバイア"、西に妖精国"フェアリア"、南に我が国エシリア王国が有るわ」
ベイカーさんに続いてメグミさんが順番に指を指して教えてくれる。気になるのはマーメティア、ガルメティア、フェアリアかなぁ。帝国は何か近寄り難いイメージがあるな。
「明日この五ヵ国の王が集まって会議が行われる」
「急なのによく集まりましたね?」
この世界にテレビ電話何て無いだろうから直接話をするのだろう。
「ああ、めったに使わない転移門を使っての緊急会談だ」
ほう、転移門とな?
「転移門は魔力消費が多いので多用できないはず、それを使うなんてよほどね」
さらに聞くところによると、転移門は各国を繋げているらしく、防衛の観点からも普段は封鎖されているらしい。
「どうやら既に死線帯には魔王軍が集まっているらしいからな」
「死線帯?」
また新しい言葉が。
「ああ、ここだ」
ベイカーさんが指したのはエシリア王国から更に南、海を挟んでうっすらと描かれている陸地。
「ここは何処までも続く死の大地だ、全容を誰も知らないので、ほとんどの地図には一部しか書かれていない」
「そこに魔王軍が?」
「正確には魔族が住んでいる。人や動物は住めないが、魔族や魔物は住めるからな」
何故?という顔をしていると。
「死線帯は魔力が溜まり易くてね、元々魔力の影響で生まれた魔族や魔物でないと、その地に入れないのさ」
「ふむ、人が生活したらどうなりますか?」
「魔物に成るか、気が狂うかのどちらかだね」
そりゃ住めないわ。
「なので我々は迎撃しか出来ないのだよ」
「なるほど、それで他の四か国に応援をお願いすると?」
「その通りだ、明日はタクト達にも参加してもらうから、今日はもう休め」
「え?参加していいんですか?」
「当然だ、君達は勇者一行なんだからな」
そりゃそうか、魔王を倒すなら勇者は呼ばれるか。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
翌朝迎えに来たベイカーさんと一緒に城に行く。
城に着くと直ぐに王様の所に通され、挨拶もそこそこに他の四か国の王が集まる会議室に連れていかれる。
「御待たせした、勇者が参られました」
中に入ると自然と注目されるのだが、流石各国の王、威圧感が半端じゃない。
「ほう、そいつが新しい勇者か」
「前の勇者よりはマシみたいですねー」
「しかし、所詮は異界の者何処まで信用できるか」
「うーん、頼りにぃ成るとはぁ思いますよぉ?」
上から帝国、獣王国、妖精国、海洋国の順番、要注意は獣王国と妖精国だな。妖精国は言わずもがな言ってる事が威圧的、獣王国は一見友好そうに見えるが、何気に殺気がひしひし伝わってくる、何で?
因みに何故順番が解るかと言うと、それぞれ特徴がはっきりしている。帝国は王国と同じ一般的人間なのだが、獣王国の王様いや、女王様はウサギの耳が生えた所謂獣人、妖精国の王も女王でよくファンタジーに出てくるエルフの耳に半透明な羽が有る、あれ飛べるのかな?次に海洋国なのだが、頭というか耳?に魚のヒレみたいなモノが有る、あれは生えているのか?付け根は髪で隠れて見えないのでそうゆう髪飾りと言われればそうも見える。
「では、会議を始めさせてもらう」
俺達が席に着くのを見てから、テオドール国王が宣言する。
五ヵ国会議の始まりだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます