つめたい冬も、あたたかい春も――あなたのとなりで。

皆さんご存知のとおり、ファンタジーの中で『オーク』という種族はなかなかに不遇な扱いを受けています。体格はゴツいし、顔は怖いし、性格は粗野で乱暴……。でも人間もそうであるように、同じ種族であってもその人格は様々。オークの中にだって、優しくてカッコ良くてちょっとお茶目な――そんな存在がいたっていいじゃありませんか?このお話に出てくるオークの『ザグル』も、そんな素敵な人物のひとりです。

あらすじだけを見るとファンタジー世界で生きる存在が私たちの世界にやってくる『逆転移』ものですが、このお話はちょっとそれとも毛色が違う。なんとザグルを迎えることになる女性『雪江』は、こういった作品の主人公が当然もっているべきファンタジーについての知識を『まったく』もっていないんです。それどころか、こんなに強面の巨漢を雨の中で拾った子猫のように(というかまんまそれなのですけど笑)、すんなり自分の生活に受け入れてしまう。ちょっとおとぼけた女神のような女性なのです。

しかし物語の都合上そうした無用心な性格にしているのではなく、ちゃんと『そうしてしまった』理由もあって。他の場面もそうなのですが、隅々まで作者さんの仕掛けが張り巡らされていることには脱帽させられます。読んでいて「あっ、そうだ!たしかにあの場面で!」と、気持ちよく驚かされることが多くありました。

一方ザグルは、この世界では『稀人』という特殊な立場にあります。なんとこの世界、ファンタジー作品から名のあるキャラクターが転移してくるという『現象』が立証されているんです。それでもその名の通り非常に珍しい存在であることには変わりなく、常に彼へと向けられるのは奇異と畏怖の目。けど、普通にホームセンターでバイトしちゃったりします!笑(ここにも波乱がいっぱいで目が離せません)

そんなふたりが互いの存在と世界のこと、そして自身の過去についてをひとつずつ解きほぐしながら近づいてく、本当に優しい恋物語。二人を見守る友人たちについても大きな秘密があり、良くも悪くもひととの繋がりについて思いを馳せずにはいられないお話となっています。何回も泣かされました^^;

じっくり愛を育てるお話が好きな方に。そして「ああ、オークかぁ……」とか安易に思っちゃったあなたにこそ!ぜひ!!おすすめしたい!!!(力説)こんなにイケメンなオークいるんだって、絶対常識変わりますから!笑

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