ある日突然、異世界から来たオークの青年ザグルと一緒に暮らすことになった30代の女性が主人公です。
ザグルは気は優しいとはいえ見た目がガチオークなので普通そんなことになったら相当怖い気がするのですが、主人公の雪江さんは持ち前の優しさとちょっと天然な?性格で一緒に暮らすことを受け入れます。
この雪江さんの性格が絶妙で私は凄く好きなのですが、やっぱり男女の二人暮らしは…雪江さんちょっと心配になるくらいお人好しで隙があって、思わず「大丈夫!?」とか「気づいて!」とか思いながらツッコミを入れつつ読んでしまいます。
そんな彼女の持ち前の優しい心が主軸となって、彼女の友人を巻き込みながら物語が展開して行きます。
現代への転生ものですが、単なるファンタジーではないストーリーに魅力があると思います。読み進めると差別、偏見や愛情の欠落、など深いテーマが奥底に眠っていることに気が付きます。
登場人物一人一人互いに誰かを思いやる優しさに心を動かされる、シリアスな展開を抜けた後にほっと優しい気持ちになれるファンタジーです。
「稀人」物語の中やゲームの登場人物が、こちらの世界にやってきてしまった時にそう呼ばれるそうだ。
物語は寒い冬の始まりの日に、オークであるザグルが雪江の前に現れるところから始まる。オークといえば、大抵が体の大きな乱暴者だという印象があると思うが、これを主人公がのっけからひっくり返してくれる。
雪江はその現代人とはまた違った思考を持つザグルの行動に時には心配し、呆れたりしながらも、当たり前のように「ザグル」に先入観なしで接している。
稀人という存在を知るうちに、その背景にある悲しい出来事を知ったり、逆に雪江にも辛い背景や忘れられない出来事があったり。それを取り巻く登場人物たちも個性豊かで目が離せなくなってしまう。
コミカルな掛け合いと、自分達の存在意義を問うようなシリアスな場面とが絶妙なバランスで混じり合い、実際の現代社会に生きる私達にも刺さるような内容もあり、ぐいぐい惹きつけられてしまうのも魅力。
ほんの少しの感情の掛け違い、誰かのためにと思った行動の裏返し……。ほんの一言、お互いに歩み寄って話し合えばこんなにも温かくまとまる場所があるんだと。それに気づかされる物語。
きっと、これまでに誰かと触れ合う中で悔しい思いをしてきただろう人にも、是非読んでほしい。
そんな心の底から温まる、「誰しも見かけだけじゃない」そんな気持ちを再認識させられるような作品です。
皆さんご存知のとおり、ファンタジーの中で『オーク』という種族はなかなかに不遇な扱いを受けています。体格はゴツいし、顔は怖いし、性格は粗野で乱暴……。でも人間もそうであるように、同じ種族であってもその人格は様々。オークの中にだって、優しくてカッコ良くてちょっとお茶目な――そんな存在がいたっていいじゃありませんか?このお話に出てくるオークの『ザグル』も、そんな素敵な人物のひとりです。
あらすじだけを見るとファンタジー世界で生きる存在が私たちの世界にやってくる『逆転移』ものですが、このお話はちょっとそれとも毛色が違う。なんとザグルを迎えることになる女性『雪江』は、こういった作品の主人公が当然もっているべきファンタジーについての知識を『まったく』もっていないんです。それどころか、こんなに強面の巨漢を雨の中で拾った子猫のように(というかまんまそれなのですけど笑)、すんなり自分の生活に受け入れてしまう。ちょっとおとぼけた女神のような女性なのです。
しかし物語の都合上そうした無用心な性格にしているのではなく、ちゃんと『そうしてしまった』理由もあって。他の場面もそうなのですが、隅々まで作者さんの仕掛けが張り巡らされていることには脱帽させられます。読んでいて「あっ、そうだ!たしかにあの場面で!」と、気持ちよく驚かされることが多くありました。
一方ザグルは、この世界では『稀人』という特殊な立場にあります。なんとこの世界、ファンタジー作品から名のあるキャラクターが転移してくるという『現象』が立証されているんです。それでもその名の通り非常に珍しい存在であることには変わりなく、常に彼へと向けられるのは奇異と畏怖の目。けど、普通にホームセンターでバイトしちゃったりします!笑(ここにも波乱がいっぱいで目が離せません)
そんなふたりが互いの存在と世界のこと、そして自身の過去についてをひとつずつ解きほぐしながら近づいてく、本当に優しい恋物語。二人を見守る友人たちについても大きな秘密があり、良くも悪くもひととの繋がりについて思いを馳せずにはいられないお話となっています。何回も泣かされました^^;
じっくり愛を育てるお話が好きな方に。そして「ああ、オークかぁ……」とか安易に思っちゃったあなたにこそ!ぜひ!!おすすめしたい!!!(力説)こんなにイケメンなオークいるんだって、絶対常識変わりますから!笑
創作物語の世界で生命を落とした住人は、ときに〈稀人〉としてこの国へやってくる。
30歳になったばかりの独身女性、狭間雪江(はざま・ゆきえ)の前に、突然の閃光とともに彼は現れた。二メートルを超す身長、赤黒い肌、剥き出しの牙に猫のような金色の瞳……ファンタジーの世界では怪物として恐れられる〈オーク〉の彼・ザグルは、彼の世界『イズワス・エピック』で人間の味方をしたために命を落としたのだ。
異世界ファンタジーに疎い雪江は、とっさにザグルを救け、奇妙な同居生活を始めた。
◇
という衝撃的な導入から始まる物語です。私のような人外好きは〈オーク〉というだけで惹かれます。このザグル君がまた、言葉はぶっきら棒ですが、優しくて紳士的で誠実で、とにかくいい子なんですよ……応援したくなります。
そして、彼を救けた雪江ちゃんも、ちょっとずれているけれど、おおらかで可愛いらしい。彼女の親友・結衣ちゃん、ザグル君の職場の同僚で何かと助言してくれる「マサオ」さんも好人物です。
それぞれ事情を抱えてはいるものの、いい人ばかりの彼らにトラブルが起きます。どうなってしまうのだろうと読み進めていくうちに……人と人が理解しあい、助けあって生きていくために大切な何かを、感じ取れたように思います。
ちょっと風変わりな逆転移ファンタジー、人外とほのぼの系がお好きな方にお勧めします。
転生ものですが、舞台は現代日本。そう、逆転生してきてしまった物語世界の住人「稀人」のオークであるザグルと、彼を拾い一緒に暮らすことになった女性、雪江を巡るものがたりです。
なんといっても、このものがたりの一番の見所はザグルのキャラ造形の見事さ。見かけからして怖いという印象しかまず持てないオークである彼ですが、その心根は暖かく、ちょっとコミカルで不器用ながら雪江を思いやる気持ちはどこまでも優しく一途。とにかくその存在全てが愛おしく、親しみやすい。その存在感にくるまれながらストーリーを読み進めることができます。ザグルというキャラが醸し出してくれる、安心感と心地よさが、この作品の醍醐味であると感じて止みません。
対して数々の過去に痛みを抱えて生きてきた雪江も、ザグルの存在に心癒やされ、やがて、自身の心の傷と真摯に向き合っていく過程が丁寧に描かれています。その心の変化を追っていけば、いつのまにか、主人公達の幸せを願ってやまない自分に気付きます。見事に引き込まれました。そして迎える大団円……!
読了後、ああ、この世は捨てたもんじゃないなあ、というほんわかとしつつも深い感慨にとらわれました。
なんとも幸せな気分です。
きっと、このお話を必要としているひとが、この世には沢山いるはず。
それだけに、このものがたりがもっと多くの方に届くことを願ってやみません。
死んで物語の世界やゲームの世界に転生するというお話が多い中、こちらの作品はなんと、物語の登場人物が現実世界に転生してくるという。
主人公雪江は偶然その転生に居合わせてしまい、稀人と呼ばれる彼をお人よしにも保護するのですが、その彼は王子様でも勇者でもなく、そもそも人間ですらなかった…。
彼女の元に現れたのはザグルという名の若いオーク。物語では悪役や敵モンスターの代名詞として扱われる種族ですが、この彼は中身がとんでもなくイケメン。このオーク、惚れる。
顔が怖いとか、とにかくデカイとか、倫理観や常識が違うせいで頓珍漢なところもあるけれど、気遣いが出来るし空気も読むし、気付けばザグルを保護していたはずの雪江の心の支えとなっていく…という流れがエモーショナル!
雪江の抱える心の傷、親友ユイの秘密、元彼の朋也の存在…。それぞれが絡み合い、相手を思いやる気持ちや、心に寄り添う事を、この世界で生き直すザグルからたくさん学べます。
稀人という存在はファンタジーですが、稀人を含め登場人物の人生や生活、心情はとてもリアリティがあり、胸に刺さる要素も。
優しいザグルと雪江がこれからも幸せでいられますようにと、読者も願う大団円のラストも必見。
作品に応援いただいたご縁でこの物語に出会いました。更新分まで読み終えましたので、レビューさせていただきます。
本作は現代社会に、異世界ファンタジーの住人が稀人としてやってくる物語です。そんな彼らを邪険にしたり特別扱いすることなく、感情を持つ一人として主人公が相対していく物語は、種族等に全く関係のない、人として大切な"情"というものを感じます。
彼らが紡ぐエピソードも、心温まるものから、それぞれが抱える過去と向き合うものまで等、多岐にわたります。個人的には、現時点での最新話で主人公の過去の象徴である登場人物との決着がどうなるのか、が気になりますね。
今後彼らがどうなっていくのか。稀人がどうしてやってくるのか。続きが非常に楽しみとなっております。
他の皆さまも是非読んでみてください。
創作の物語の世界で死んだキャラクターが、稀人として現実世界に転生する世界で紡がれる物語。
30歳の誕生日を迎えた雪江が出会ったのは、「イズワス・エピック」というゲームに出てくるオークのザグルだった。
行く当てのないザグルを雪江は招き入れ、そこから二人の同棲生活は始まっていくーー
体は大きく、一見強面だが優しいザグルと彼を慕う雪江。お互いを想い合う二人の優しく甘い生活には胸をときめかせずにはいられません。
年下らしく雪江に懐く一方で、悲しい過去を持つ雪江を大きな体と温かな心で包み込むザグル。お互いを意識しつつも一歩を踏み出せないようなこの距離感がたまらない!!
物語の構成もしっかりしており、続きを読みたいと思わせる力があります。
実は雪江の元彼、朋也は稀人と関係があり……後半はハラハラドキドキの展開が続きます。衝撃の事実に、思わずページをめくってしまうこと間違いなし。
ザグルの男気と、雪江の活躍にも注目ですね!
愛で紡がれる二人の物語をあなたもぜひ堪能してみてください。