違いを認め、尊重しあえれば、人外だって共生できる。

創作物語の世界で生命を落とした住人は、ときに〈稀人〉としてこの国へやってくる。

30歳になったばかりの独身女性、狭間雪江(はざま・ゆきえ)の前に、突然の閃光とともに彼は現れた。二メートルを超す身長、赤黒い肌、剥き出しの牙に猫のような金色の瞳……ファンタジーの世界では怪物として恐れられる〈オーク〉の彼・ザグルは、彼の世界『イズワス・エピック』で人間の味方をしたために命を落としたのだ。
異世界ファンタジーに疎い雪江は、とっさにザグルを救け、奇妙な同居生活を始めた。

    ◇

という衝撃的な導入から始まる物語です。私のような人外好きは〈オーク〉というだけで惹かれます。このザグル君がまた、言葉はぶっきら棒ですが、優しくて紳士的で誠実で、とにかくいい子なんですよ……応援したくなります。
そして、彼を救けた雪江ちゃんも、ちょっとずれているけれど、おおらかで可愛いらしい。彼女の親友・結衣ちゃん、ザグル君の職場の同僚で何かと助言してくれる「マサオ」さんも好人物です。
それぞれ事情を抱えてはいるものの、いい人ばかりの彼らにトラブルが起きます。どうなってしまうのだろうと読み進めていくうちに……人と人が理解しあい、助けあって生きていくために大切な何かを、感じ取れたように思います。

ちょっと風変わりな逆転移ファンタジー、人外とほのぼの系がお好きな方にお勧めします。

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