幸せになろうよ! 誰もが本当の自分を隠している現代人にこそ読んでほしい

 「稀人」物語の中やゲームの登場人物が、こちらの世界にやってきてしまった時にそう呼ばれるそうだ。
 物語は寒い冬の始まりの日に、オークであるザグルが雪江の前に現れるところから始まる。オークといえば、大抵が体の大きな乱暴者だという印象があると思うが、これを主人公がのっけからひっくり返してくれる。
 雪江はその現代人とはまた違った思考を持つザグルの行動に時には心配し、呆れたりしながらも、当たり前のように「ザグル」に先入観なしで接している。

 稀人という存在を知るうちに、その背景にある悲しい出来事を知ったり、逆に雪江にも辛い背景や忘れられない出来事があったり。それを取り巻く登場人物たちも個性豊かで目が離せなくなってしまう。
 コミカルな掛け合いと、自分達の存在意義を問うようなシリアスな場面とが絶妙なバランスで混じり合い、実際の現代社会に生きる私達にも刺さるような内容もあり、ぐいぐい惹きつけられてしまうのも魅力。

 ほんの少しの感情の掛け違い、誰かのためにと思った行動の裏返し……。ほんの一言、お互いに歩み寄って話し合えばこんなにも温かくまとまる場所があるんだと。それに気づかされる物語。
 きっと、これまでに誰かと触れ合う中で悔しい思いをしてきただろう人にも、是非読んでほしい。
 そんな心の底から温まる、「誰しも見かけだけじゃない」そんな気持ちを再認識させられるような作品です。

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