幼なじみ。一番距離が近くて、だけどすれ違うと一番遠くなる人。そんな二人の距離にドキドキしながら、ホームの場面で思わず涙ぐんでしまいました。直球だからこそ胸にじんわり響いて、ラストにはじんわり胸が暖かくなる、そんな素敵な恋の、いいえ、愛の物語。「お母さん」、GJ!
中学にはいって以来口もきいてくれなくなった秋人。高校卒業間近にせまった雪の夜。引越しを知らせにやってきます。「100円返せ」話のキッカケですけれど、不器用ですな。美冬は冷たくあしらいます。秋人のお母さんは美冬をかわいがってくれていました。引越し前にと会いにゆきます。秋人、お母さんには美冬のことどう話していたのでしょうなんだかずっと親しい仲っぽく誤解されているみたい。引越しの日、駅で電車を待つ親子。離れた陸橋の上で見送る美冬。美冬は秋人をどう思っているのか。このままお別れでよいのか。絶妙なキラーパスが冴えます。
同じプロットから小説を書く企画の参加作品、今回はなぜか変化球作品での参加が目につくのですが、この作品はドストレートに真ん中を狙った王道恋愛ストーリー。雪の豊かな情景描写も相まって、直球とはこうやって書くんだという模範の域にまで到達しています。いやー、これはやられましたね。こういう直球作品書いてみたいものです。
秋人とは恋愛関係はない。繰り返される、このフレーズ。最初はやんちゃな幼馴染に呆れてるのかと思いきや、恋心を隠すために自分に言い聞かせていたのだと分かってから、この物語は鮮やかな輝きを放ちます。どこかの世界にきっと息づいている、小さな、だけど尊いラブストーリーです。
もっと見る