第6話 楓の現状
「じゃ、じゃあ改めて……楓ちゃん」
「はい! 先輩! 呼び捨てでも良いですよ!」
満面の笑みで応える楓に俺は思わず苦笑いをしてしまう。
とりあえず気を取り直し楓の今の話を聞く。
しかし、生まれ変わって妹の現状を聞くという、この不思議なシチュエーション、何か親同士が離婚して別々に生活し、久しぶりに会った様な感覚なんだが……。
「その髪の毛って地毛だよね?」
俺はまずは妹の容姿、鮮明に残っている記憶、特にその髪の毛の事から、聞く事にした。
「そ、染めてないですよ! 地毛です!」
「うん、わかってるよ」
「よく言われるんですよねえ、父も母も普通なのに……何故かこんな髪の色で……何でだろう?」
肩口の髪を指で絡めながらそう言う楓。
「隔世遺伝って奴だな、何世代も前の遺伝子が突然出てきたりするって聞いた事がある」
「へーーーーそうなんだあ、先輩物知り~~」
多分前世の影響何だろうけどねえ……。
赤いと言っても派手ば色でなく今は日の光に照らされオレンジ色に輝いている。
楓の事は、その容姿は、告白された後クラスでも楓の噂で持ちきりとなった。
特に男子からは羨ましいの連発、女子からはあんな可愛いのに泣かすとか最低と俺はクラスでかなり鬼畜扱いされた。
それくらい楓は可愛い……らしい。
らしいというのは前にも言ったが、俺自身そう感じないからだ。
客観的見ればそう思えるかも知れないが、俺には妹としての認識しかない。
女子として、異性として思えないのだ。
異性としての可愛いと、妹としての可愛さ、これは全く違う物なんだ。
「先輩~~聞きたい事ってそれだけ?」
「え? あ、えっと、料理が得意って言ってたよね」
この間の告白の時の自己紹介で確かそんな事を言っていた気がする。
「そうなんですよ! って事で少し早いけどお昼にしましょう!」
楓はそう言うと持っていたバックから弁当箱を取り出した。
その時俺の頭の中にまた映像が……前世の記憶が甦る。
家で手料理を振る舞う妹……甲斐甲斐しく俺を世話する妹の姿……あれ? おかしいぞ? 俺の今までの記憶だと、妹は俺に罵声を浴びせたり、近寄るなとか、洗濯物を一緒に洗うなとか、あまりいいシーンは無かったのに……。
「頑張って早起きして作ったんです……鮭のおにぎりと卵焼きとウインナー、簡単すぎでもっと凝った物作ろうって思ったんですよ、でも不思議何ですよねえ、何故かこれが先輩の好きな物だろうって、あってます?」
「え? ああ、うん……好物」
「あははは、やっぱり? 自然と頭に浮かんできたんです、やっぱり私達相性バッチリ何ですよ!」
「いや……ただの偶然……」
これも前世の記憶とそう思ったその瞬間、俺はとんでもない事に気が付いた。
そうなんだ……おかしいんだ……。
妹の前世の記憶が……俺と同じ記憶なんだという事に……。
同じ時代を一緒に生活してきたのだからと、そう思っていた……でもおかしい。
通常一番長く生活していた記憶、例えば職業なんかが映し出される筈。
しかし俺の前世の記憶の殆んどは妹なのだ……つまり俺は成人する前
働き出す直後、その前後に死んでいるって事になる。
それはわかる、病気か事故か……でも、じゃあ妹は? 俺の中で妹は丁度成人した頃の記憶迄しかない、でも妹の前世の記憶、俺の能力で探った記憶も丁度同じ頃の記憶までしか、しかも俺と一緒の記憶しかない……。
どういう事だ? 友達とか、恋人とかではなく俺との記憶が鮮明に残っている。
これは一体……。
そんな事を考えていると、目の前に好物の卵焼きが。
それを何気にパクリと口にいれ……あ。
「ふわあああああ! しぇ、しぇんぱいが、あーーんを受け入れてくれたああああ!」
「あ、いや、つい……」
「ふわあああ、やっぱりもう私達付き合うべきです! てかもう付き合ってます! 決めました!」
「い、いや勝手に決めるな」
「先輩! さあ、キスしましょう誓のキスを!」
「しねーーよ!」
一体なんなんだろうか? 俺と妹の関係は? 前世での関係は? 一体……。
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