第9話 年上の妹
黒髪の美少女……我が校のアイドル的存在。
確か山ノ井なんとかって名前だった様な。
そんな人の前世に何故か俺の映像が……。
俺の記憶には、前世の映像にはこんな黒髪美女は一切映っていない……。
俺が混乱しながら見つめていると、目線に気付いた山ノ井さんが俺を見る。
山ノ井さんは俺見て首をかしげた。
いや、まずい、先輩を見つめていた。何でも無いですと俺は手を左右にブンブンと降ると山ノ井さんも首をかしげて手をブンブンと降り始めた。
いや……違うし……何だこいつは……こう見えて天然? と思い少し大きな声で言った。
「いや、何でも無いです」
俺がそう言うと彼女は顔を赤らめ手を止める。
そして笑顔で俺を見た後に、綺麗な姿勢で振り返り出口に向かって歩き出そうとしたが、何かを思い出したかの様にまた立ち止まり、再度俺を見る。
「………………」
何で二度見? そう思ったが俺からは何も出来ない。蛇に睨まれた蛙の様に、怯える様に、その場でじっとしていた。
彼女はそのままじっと立ち止まり俺を見続ける。
山ノ井先輩って変な人?
そんな状態のまま5分程経過する。
いや、もうすぐ昼休みが終わってしまうんだけど……一体なんなんだ? と思ったその時、彼女が動いた。
そして……。
「こんな人が、こんなお方が……この学校に居たなんて……知らなかった……」
「はい?」
「いいえ……えっと、貴方のお名前は?」
「あ、えっと妙正寺でつ、みょうひょうじ敬……」
突然の事に噛み噛みで名前を言うと、彼女は笑いもせずに俺に向かって言った。
「ま、まるで悠久の時を経て出会った運命の人の様……敬さま……私と結婚を前提にお付き合いしてください」
「…………ええええええええ!」
「お願いします」
俺の前に跪き、俺の手を握り彼女はそう言った。
その時、手を握られた瞬間……俺の頭の中に、彼女の前世の映像が記憶が流れ込んで来る。
「え? ええええ!」
その映像、その前世の記憶……それはまるっきり楓と同じ記憶、俺の記憶と全く同じ物……。
どういう事なんだ? 俺は戸惑った。
いや……まさか……でも。
俺はこの状況から一つの答えを導き出す。
しかし……条件が、今まで見てきた条件と違い過ぎる。
でも考えられる事は一つ、そう……魂の分裂……前世からの分裂。
前世の妹が……妹の魂が、現世で二人になっていた……。
一体どういう事なんだ? こんな事ってあり得るのか?
そして俺が今まで見てきた妹と容姿が違う……。
全く意味が分からないこの状況に俺は戸惑い続けていた。
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