第11話 妹が二人?
黒髪の美少女、山ノ
立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花とは彼女の為の言葉と言われているとかいないとか……。
とにかく俺なんか話をするのも烏滸がましい位の人気者で、俺もこの1年学校内で何度も見かけたが、取り巻きが大勢いた為に近寄る事も出来なかった。
それが、そんな存在のお方が今まさに俺の目の前に降臨されている。
対して、その隣にいらっしゃる
赤い髪、整った顔、山ノ井梢の後継者として既に学校での注目の的になりつつある。
その我が校ナンバーワンとナンバーツーが俺の前で、お互い一歩も引かず、喧嘩寸前に俺を巡って言い争っている。
「先輩、お昼どこに行ってたんですかあ? 折角お弁当作って来たのにいい」
「あら、敬君学食にいたのよ? ふふふ、貴方の作った物なんて食べたく無いから学食に来てたんじゃなくて?」
「っていうか……なんなんですかおばさん、今、私は愛する先輩とお話してるんで邪魔しないで貰えます?」
「あら、私は放課後敬君と約束していたの、貴方こそ邪魔よ、子供は早く帰ってお家で飴でもなめてなさい」
俺の目の前で睨み合う二人……いや、お前ら同一人物だったのに喧嘩すんなよ……。
教室内、突然入ってきた上級生と下級生の美女二人に、周囲は騒ぐ事なく見守っている……というよりは、今までクラスでも影が薄かった一生徒が、突然美女二人に囲まれるというこの状況に誰しも信じられない、理解出来ないと言った雰囲気になっている様だ。
うん、わかる……わかるよ、だって一番理解出来ていないのは……俺なんだから。
でも、だからと、このままってわけにはいかない。
俺はまずはこの状況を、今置かれている現状を確認する事にした。
「えっと、ごめん、楓ちゃん、ちょっと今日は山ノ井先輩と話があってそれで放課後呼んだんだ」
楓の事はある程度知っている。今は山ノ井先輩を知る事が優先と判断し、俺は楓に今日は引いてくれと頼んだ。
「えーーーー今日先輩と遊ぼうって思ってたのにい」
「ごめん今度埋め合わせするから、ね?」
「……まあ先輩がそう言うなら……先輩このおばさんに誘惑されちゃ駄目ですよ?」
そう言って楓は一度険しい表情で山ノ井先輩を睨み付けると、ニッコリ笑って俺にそう言った。
「良いから子供は早く帰りなさい」
上級生、しかも2学年も上の貫禄を示す様に先輩はそう言うも、楓は聞いていないかの様に山ノ井先輩を完全に無視、俺に手を振りながら何度も振り返りつつ教室を後にする。
「……とりあえず……行きましょう」
楓が教室から出ていくのを確認し、おれは山ノ井先輩にそう言って席を立つ。
とりあえずここでは話が出来ない……俺は先輩を引き連れ教室を歩く。
周囲の人だかりはモウゼの十戒の海の様に俺達が歩く道を開ける。
ざわざわとクラスメイトが囁く中、俺はなに食わぬ顔で教室を後にした。
教室を出た瞬間、阿鼻叫喚、絶叫するクラスメイトの声……それは俺の平穏な学校生活が終わった事を告げるかの様だった。
俺はこれから一体どうなるのだろうか……。
そして俺の前世に一体何があったのだろうか?
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