前世に妹だった後輩(と先輩)から告白されたんだが、前世が見える俺はどうすれば良いのだろうか?

新名天生

第1話 元妹からの告白

 輪廻転生、宗教じみた話で恐縮だが、まずはちょっと話させて欲しい。

 輪廻転生、つまりは生まれ変わりの事だ。

 死んでもまた生まれ変われる。古くからの言い伝え……実際死人にくちなしなのだから、それが本当かはわからない……。でもあるのだ、輪廻はある、いやあったと断言しておく。


 俺の調査によると、人は必ず人に転生する。つまり必ず人に生まれ変わる。前世が動物だったり、植物だったりする事はない。その逆もまた然りである。

 

 さらに言うと、転生してくる時代も国もまちまちで、中世ヨーロッパから、かなりの時間を経て、今のこの日本に転生してきた者も居たりする。

 だがそれはごく僅かだと言わざるを得ない。

 それを今話すと長くなるのでそれは追々話して行く事にする。

 

 前世で死ぬと肉体滅びる。しかしいわゆる精神は魂となり次の命に身体に転生する。

 しかし、よく言われる矛盾の一つに人口の違い、現在の人の数は過去よりも圧倒的に多い、つまり人から人のみの転生だと魂足らなくなるという事になってしまう。


 しかしそれについても、俺は自らの調査で、ある一つの仮説を立ててある。

 

 それは双子や三つ子、または兄弟や姉妹と言った良く似ている複数の者が関連している。


 そう……一つの魂が一つの人間に転生するわけでは無い、と言う事だ。


 特に双子はかなりの確率で、一人の魂が分裂して転生している事を俺は確認している。他にも、性格が瓜二つの兄弟なんかもそれに該当していた。


 何故俺がそんな仮説を立てられ、輪廻は確実にあると断言出来るのか?


 それは……俺がその人間の、出会った人の前世が見えてしまう能力を持っているからである。


 ちなみに前世の前世等はわからない、俺が見れるのは正対した人物、その直近の前世だけである。


 勿論見えるというのは、おれ自身の前世も例外ではない。


 ちなみに俺の前世は中世の騎士……なんて事はなく、ごく普通の家庭、それも日本の家庭だ。

 そして……俺が生きていた時代は今からそれほど遠くない、約数十年前……恐らくは昭和の時代……。


 つまり俺の前世は普通の日本人で、それほど遠い昔ではない時代に生まれ、そして死んでいった者となる。


 何故こんな曖昧な言い方をしているかと言うと、それは俺のこの前世が見れるという能力の精度が極端に悪いせいだからで、見れるのは、曖昧な映像、ぼやけた様な、ピントが合わない様な風景等、その前世の時の会話も聞けたりするが、ほんの一部分だったりする。

 つまり、はっきりとした事は殆んどわからないというなんともお粗末な能力なのだ。


 ただ一つ、俺の、俺自身の前世で、はっきりとわかっている事がある。 


 俺には、俺の前世には妹がいたって事だ。


 何故だか妹の映像だけははっきりと俺の頭の中に映し出されている。

 

『にいたん、わたち、にいたんとしょうらいけっこんすう』

 今も思い浮かんで来る。赤い髪の少女は俺を見てそう言いニッコリ笑った。

 

 生きていればもう中年、恐らく顔立ちも変わっているだろう。


 仮に死んで転生したとしても、同じ時代、同じ場所に転生するとは限らない。

 

 名前もわからない、住んでいた所も……そんなあやふやな中途半端な俺の能力……俺はこの能力の事は、まだ誰にも言っていない

 



 ◈◈◈


 

 高校生活2年目と言っても成績順でのクラス編成の為、殆んど代わり映えしないクラスメイト。

 クラスメイトの前世も見飽きてた感がある中、数人が入れ替わった為に俺はなんとなくこの能力を使った。

 

 ちなみに誰かれ構わずに前世を見ているわけではない、それなりに労力が伴う為に、いつもはスイッチを切っている。

 まあ、暇潰し程度に見れるくらいの労力なんだけど。


 俺の経験では、そいつの前世と性格は面白いくらいにマッチする。

 正義感溢れる熱血男の長谷部の前世は警察官。

 クラスで一番勉強の出来る渡辺は数学者。

 色んな職業を経験した前世の高橋はやはり落ち着きがない等。

 そいつの前世は今世の性格に反映されている様だった。


「まあ、普通?」

 新しく入ったクラスメイト数人の前世を確認したが変わった職業や、変わった人生の奴はいない……ただ一人凄い偶然の生まれ変わりをした人物がいた。


 さっき言った熱血漢溢れるスポーツマンの長谷部、そいつの前世での奥さ

 そう、元嫁だ。

 まだ自己紹介も済んでいない為に名前も知らないが、この女子は長谷部の元嫁だった。


 そして今長谷部とこの元嫁は付き合ってる。その証拠に、ほら二人は少し照れながら見つめあっている……もう既に付き合ってるのだろう。


 そう、ごく一部だが……前世で関係が深かった二人が今世でも付き合ったり結婚したりしている。

 まあ、そんなカップル本当に稀なんだが……。


 逆に前世で因縁のあった二人が今世でもいがみ合ったりする。

 

 勿論あやふやな映像の為に事前に知ることは出来ない。

 いつも喧嘩ばかりしている二人の前世を見た時にそんな映像が頭に浮かんできた。

 長谷部の嫁も、今長谷部と見つめあっているから見えたのだろう。


 当然それは全て俺の思い込みかも知れない……あやふやな映像、幽霊が見えるというくらいの戯言。

 

 「いらねえよなあ……こんな力……」

 自分に関係のある人物は今までいなかった……。

 普通に生きて恐らく早死にしたであろう俺の前世では、そんなもんだろう。


 俺は能力を切り、意識をクラス内から外に向けた。


 窓際の席だった為……教室からボーッと窓の外を眺めると……渡り廊下に生徒の列がが見えた。

 ネクタイの色から新入生だろうか? 教室から体育館に移動していくのが見える。

 恐らくオリエンテーションだろう……俺は何も考えず、能力を使う事なくボーッとその新入生を見ていると、一人の女子が立ち止まり俺の方を見上げた。

 

「え?」

 見覚えのある顔立ち……見覚えのある髪の色……。

 

 赤い髪のその女子は驚きの表情で俺を見ている。

 その女子は、暫く渡り廊下に佇み俺を見つめていたが、先生に早く行く様に促されその場を立ち去った。


「今のって……」

 距離があった為に能力は使えない……でも……間違いない……あれは……俺の妹そのものだった……。


 前世での唯一はっきりとした映像……記憶……その妹と瓜二つの姿……。


 子供の頃から大人になるまでの妹の姿は、はっきりと見えている。

 その中間、そう中学生から高校生にかけての妹の姿そのものだった。


『ねえ、お兄ちゃん……私の事じろじろ見ないでよ』

 今でいう、キモいって感じで言われている映像が俺の頭の中に映し出されている。

 

「いや待て……似ているだけだろ?」

 そんな偶然あるのか? いやでも長谷部の件もある……。

 でも……もしかしたら……そう思った。

 前世での関係者……それも妹……でも、だからなんだというのだろう? 彼女にそう伝えられる筈もない。そんな事を言ったらただの怪しい奴だ。


 でも知りたい……近くに寄って能力を使うだけなら……。

 放課後……それとなく校門で待ち伏せしてそっと見れば……俺は彼女に興味を抱いた。


 しかし……俺の妹と瓜二つの姿を持つその人物は、放課後まで待つ事なく出会えた、出会ってしまった。


 なんとその女子は昼休み堂々俺の教室にやって来たのである。


 そして、上級生の教室に何の躊躇いもなく入り、俺の目の前に来ると、とんでもない事を言ってきた。


「……せ、先輩! 私と付き合ってください!」


「……はい?」

 


 俺は能力を使い彼女の前世を見てみた。

 

 その娘は……その女の子は……間違いなく……俺の前世での妹だった。

 

 

 

 

 

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