列車は38度線を超えて

実話を元にしたような作風がとても胸を締め付けました。私も韓国の歴史については関心がある方なので、こういったような作品が読みたいと思っていました。素晴らしい作品をありがとうございます。

あまり馴染みのない北朝鮮の町の様子、そこに暮らす人々の心情、そして、背負っている運命……
それらがとても写実的に描かれていて、リアルな臨場感の中で展開していくシリアスなドラマに引き込まれます。
短編ですが、読み応えのある、素晴らしい物語をありがとうございます。

北朝鮮の首都平壌に暮らす家族の平和は、父親の粛清によって地獄の逃亡生活へと一変した。
脱北者に迫りくる死と隣り合わせの恐怖、暗躍する人身売買組織に翻弄される母娘。
果たしてこの母娘は平和な暮らしを取り戻すことが出来るのか？
圧倒的読み応え、リアルなドラマです！

東アジアに暮らす人間として、同時代の問題として関心の強い北朝鮮。とても直球的に、北朝鮮から脱北をして韓国で暮らすことになった、とある少女の生い立ちを冷静な筆致で描き出します。
安易な脚色を嫌うかのように強固な事実（のように見えるもの）のみを積み上げていく物語の構成に、だからこそこれは、同時代の実際の問題なんだと強く訴えるものがあります。主人公が、東ヨーロッパの組織の一員にとどまりつづけたいと抵抗する様子は、歯がゆくもありだからこそ、とてもリアルに感じます。
物語の強さを別角度から再確認できる、強固な作品です。