掲示板と調合
ギルドにやってきた。
相変わらず、ロビーは人が多い。
全身鎧姿の人間や魔法使い然とした人間、想像するファンタジーギルドそのものでテンションが上がる。
そんな人たちを横目に、受付へ向かう。
「おめでとうございます。あなたの冒険者ランクが銅3級から銅1級へランクアップしました」
ああ、そういえば冒険者ランクなんてあったな。
全然気にしてなかったけど最初のボスは倒したし、もう一体のボスも倒したからランクが上がっているのはそりゃそうだろう。
「銅1級へのランクアップを記念して、ギルドよりプレゼントが送られます」
『初級回復ポーションが10個送られました』
『初級MPポーションが10個送られました』
『5000Gが送られました』
『初心者用スキル書が送られました』
おお、なんか色々貰った……!
スキル書はなんだろう?あとで確認しないと。
「ご用件はなんでしょうか?」
「調合セットを購入したいんですけど」
「はい。500Gになります」
500Gを支払って、調合セットを買う。
これで欲しかった『調合』スキルは手に入る。
他に何か良さそうなものはないかな。
ギルドで売っているアイテムを見ていると、初級調合レシピ書というのが300Gで売っていた。これも買いだ。
調合でレシピを獲得する方法はレシピ書を見るのが手っ取り早い。
一応、自分で色んな調合を試して上手くいけばそれがレシピとして保存されるらしいけど、そこまでガチでやるのは、生産メインの人だろう。
掲示板で見つけた中で、あと欲しいスキルは『火魔術師』と『パリィ』スキル。
火魔術師は100体の敵を火魔法で倒すこと、パリィは武器や防具で相手の攻撃を弾くことを条件にしている。
これはほぼ作業のようなものだし、あとでモブを倒して取ろう。
とりあえず今はこの調合セットを試したい。
調合スキルはこの調合セットで調合を行うことで獲得できる。
受付から離れ、ギルドにある酒場の椅子に座って初級調合レシピ書を見る。
載っている調合レシピはたった2つ。だけど有用な2つだ。
『薬草』と『蒸留水』で作れる回復ポーションと『魔力草』と『蒸留水』で作れるMP回復ポーション。
正直、これが作れればいい。
あとは……初心者用スキル書か。
さっき、受付嬢さんにもらったスキル書を開くと、説明が浮かんでくる。
初心者用のスキル書。
一部のスキルを消費することで取得することができる。
……ゆ、有用だ。
さっそく覚えられるスキルを見ていこう。
1/13
うきうきでスキルページを開くと、大量のスキルが表示されて、ページ数も多い。
これを一つずつ確認していくのは流石に無理だ。
検索すると有用なスキル一覧は出てくるが、ドッペルゲンガーに相性の良いスキルは出てこない。
そもそもマイナーなのもあるだろうけど。
しょうがない。私は掲示板先生に頼ることにした。
ドッペルゲンガー板を開くと、ほとんど稼働していない。ここより別のところで聞くほうがいいだろう。
調べてみると、初心者用の質問スレが引っ掛かった。
◆◆◆
【初心者だ!】初心者用質問スレ2【囲め!】
1.名無しの運営さん
ここは第二陣に向けた初心者用質問スレです。
分からないことは気軽に聞いてみましょう。
321.名無しのハーフエルフさん
森の中に頭の上に赤いマークがついているプレイヤーがいるんですが、どういう意味ですか?
322.名無しの半人間さん
草原狼どうやって倒すん・・・
323.名無しの人間さん
>>321
おそらくはプライヤーキラー(PK)
このゲームはPKやNPCへの危害、盗みを繰り返すと赤マークがつく。
黄色は厄介人、赤はガチ危険人物って感じだから近づかないほうがいい。
324.名無しの熊獣人さん
はちみつってどこで採れますか?
なかなかに盛況な初心者質問スレに、私も書き込む。
326.名無しのドッペルゲンガーさん
初心者用スキル書を手に入れました。
ドッペルゲンガーなら取っとけみたいな有用なスキルがあれば教えてください。
・
・
・
331.名無しの人間さん
>>326
ドッペルゲンガー!?!?!?!?
332.名無しの狐獣人さん
>>326
珍しい種族だな。
俺はドッペルゲンガーのことはよく知らんが、闇魔法系統ならおススメのスキルがあるからいくつか教えるぞ。
『闇魔術師』
闇魔法の追加効果を増大させる。
『闇打ち』
闇属性の攻撃に確率でスタン効果を付与する。
『影縫い』
MPを消費して相手を一定時間、その場から行動不能にする。
ここら辺はおススメだな。
闇魔術師に闇打ち、影縫いか。
一応、闇魔法を得意とする種族ではあるし、この強化は大きいと思う。
334.名無しの人間
>>326
正直、初心者がドッペルゲンガーで続けるのはだいぶ難しいから普通はキャラクリしなおすことを勧めるが、スキル書を手に入れるぐらいレベルを上げているなら何も言わないわ。
俺もベータはドッペルでやってだいぶきつかったの知ってるから頑張れって感じだ。
ベータの頃は『パペット』スキルが相性が良いって言われてたし、今でも使いこなせれば強いと思うからおススメする。
パペットか。
検索してみる。
『パペット』
MPを消費して、パペットを召喚する。
パペットは術者本人の指示によって動き、敵に攻撃するが、攻撃を受け、耐久力を失えば消えてしまう。
はぁ~ん、なるほど。
ドッペルゲンガーは基本後衛だから、パペットを前線に置くということだ。
パペットがどれだけ有用かは分からないけど、単純にデコイとしても取っておくのは良いと思う。
336.名無しのドッペルゲンガー
>>334
>>332
ありがとうございます。
パペットスキルを取ってみます。
感謝のレスをして、掲示板を閉じる。
私はスキル書を使用してパペットスキルを取った。
◆◆◆
パペットスキルを取った私は早速試しに……というわけではなく、街の外に出て、調合スキルを取る作業に入っていた。
街のショップで買った蒸留水は1本50G、それを10本ほど買って街の外の砂浜でちょっかいかけなければ攻撃してこないノンアクティブの蟹モンスターを横目に、薬草と水を混ぜて練り合わせる。
やがて出来た粘着質なその物体に水を追加すると、光り輝き、ポーションができる。
『粗悪な回復ポーションを手に入れました』
『調合スキルを手に入れました』
粗悪と言われたポーションと普通のポーションを比べてみると明らかに私が作ったポーションは回復力が低い。
何度もやっていれば品質が上がるんだろうか?それとも単純に私が下手?
どちらにしろ、もう少し試行錯誤は必要だろう。
無心で薬草を練る。
角度とか力加減とか変えながら練る。
そして積み重なる粗悪なポーションたち。
半分ほど材料を使って、粗悪なポーションを作った私は、ほっと息をついた。
「やっぱりなんかコツがいるのか?」
「コツじゃなくて、生産系スキルはやればやるだけ熟練度が上がっていくシステムなんですよ」
突然、声を掛けられて上を向く。
そこには黒髪を肩まで伸ばした背中に身の程ほどある大槌を背負った小柄な少女が無表情で、私を見下ろしていた。
「えっと……」
「ああ、すいません。声が聞こえたもので」
鑑定スキルによるとこの少女のレベルは12。
おそらく第二陣だ。
「いえ、教えてくれてありがとうございます」
「力になれたなら良かったです。では」
そう言って、颯爽とどこかへ行ってしまう少女。
私は首を傾げながらも熟練度とやらを上げるために、調合へ戻った。
「やっと完成だーーーー!」
手に握られているのは初級ポーション。
粗悪でもなんでもない初級回復ポーションだ。
熟練度、後で確認してみたら『調合』スキルをタップすると熟練度0と表示されていた。
それが1になったら初級回復ポーションを作れた。
ただそれだけのことだが、これを作るまで約2時間。
なかなかに根気よくがんばった私を褒めてやりたい。
途中で材料を買いに行ったり、これを作るよりも買ったほうが安いことに気づきそうになったりしたがようやく初級ポーションを作れた。
もう満足だ。
あの颯爽と情報だけ教えてくれた謎の少女にも感謝しないといけない。
「できましたか?」
「ひぅわ!?」
初級ポーションを太陽にかざしてご満悦になっていると、また突然背後から声を掛けられる。
人生で出したことないような声が周囲に響き、後ろを振り向くと先ほどの少女がこてん、と首を傾げていた。
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