救われたがっていても簡単には救われないリアル

言葉である歌を失った少女は、立ち入り禁止の屋上でヘッドフォンをはめて音に溺れる。
けれど、その屋上の鍵はあってないようなもの。
ヘッドフォンもノイズキャンセリングで外音を完全に遮断しているわけじゃない。
もう、気づいて欲しがっているようにしか思えない。
そこに現れた少年は、彼女に歌って欲しい言う。
差し伸べられたその手を取り、事情をうちあけた上で前へと進むこともできたはすだ。
けれど、彼女はそうできない。奇跡を信じられずまた殻に閉じこもろうとしてしまう。
正直めんどくさくはあるけど、それは彼女の傷の深さを物語っているようだし、血が通って感じられる。
そうして一度拒絶があり、ヘッドフォンをつける頻度が減っていく過程がさらりとした描写ながら書かれいるからこそ、瑠璃の石言葉である「真実」が重みを帯び、それを肯定するかのような「音」は力強く響く。

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