傷となったのは音楽。不可欠なものも音楽。
- ★★★ Excellent!!!
とても心を動かされました。
『ネモフィラと瑠璃』は二人で音楽を作り、世に出していたアマチュアユニットです。歌唱担当のネモフィラこと律葉は、とあることがきっかけで歌うことができなくなり、心を閉ざしています。音楽という自分らしい表現を失い、苦しんでいる律葉の苦しみが痛々しいほどに刺さります。
そこに現れた翼が律葉に歌ってほしいと願ったことで、律葉の世界が少しずつ変わっていく。彼女の語る言葉から、音楽が自己表現の手段であり、相方の瑠璃との繋がりであり、かけがえのないものであったことがよくわかります。繊細な心の機微、心に傷を負ったものがそれでも音楽から離れられない因果。私自身にも思うところがありますが、それを抜きにしても苦しくて、切なくて、業のようなものを感じる小説だと感じました。