鞦韆は漕ぐべし愛は奪うべし三橋鷹女はそう詠った。しかし、本作の私は鞦韆を漕が(げ)ない。ブランコを揺らすのは風。風の止む気配はなくいつまでもブランコは揺れ続ける。
文章や表現上手いです。深いです。そして、どことなく妖艶。21回目のお題からこの話が出てくるところかさすがの作者様です。
描写が秀逸です。五感をフルに刺激されます。主人公の息づかいまでもに感じられる繊細な描写。狡さ、弱さ、切なさが、揺れるブランコとシンクロして、波のように寄せて返す。21回目の使い方も巧みです。オススメ!
真夜中のベッドの上。布団に潜り込んでも脳裡に響くブランコの音と映像。 隣に寝ていたあなたは、そっと起きて換気扇の前で煙草を吸った。 主人公は外出先で、揺れるブランコを目にした。 20回目まで数えたら、帰ろうと決めて。 しかし、どれだけ数えても、きっとブランコは揺れ続けているのだろう。 主人公の揺れる心情と、ブランコの揺れが重なっていく。 最低限の物で、最低限の描写。 それなのに、読者の想像力を最高に掻き立てる。 この作者様しか書けない一作だと思いました。 是非、御一読下さい。
惰性、人生も恋愛も、結婚も一度揺れ出すと後は前へ後ろへと揺れ続け、一見景色が変わったように見えるのはただの気のせいで、座っている場所は変わらない。それは許されざる恋であっても。どこで足を着き揺れを止めるか、誰かに止めて貰うのか。いずれ終わる事を知っていて、誰かに破滅させて貰う事すら望んでいる主人公は次のブランコの揺れに何を見るのでしょう?長編はロマンチシズムの名手、短編は排他的かつ、詩的なエロチシズムの鬼才のすずめさん。流石と唸ってしまう作品です。
これ何がすごいってある特定のワードを使わずにその特定のワードを想起させている点なんですよ。タグにもついてるから言っちゃっていいかなぁ。「不倫」って言葉一つも使ってないんですよ。でもすぐに「不倫」だと分かる。夫との関係なら多分あんな遠慮はしないし、不安定な状況だからこそ自分の中の「不安定なもの」を思い出す。筆力に脱帽します。あなたも帽子脱ぎましょう。