やっぱり連作はこうでなくっちゃ

霊障にはルールがある。ルールがあるのなら、それを逆手に取ることもできる。
本作は、ある種のルールハックによって除霊を行う、霊感のない詐欺師、コンさんの活躍を描いた連作短編だ。

心霊現象の原因を突き止め、詐術を利用してそれを取り除く、そのためには調査が必要だ。詐欺の下準備、ミステリ的な迂遠なプロセス。そうした焦らされ続けるような展開を想像するかもしれない。
しかし、ご安心あれ。

各短編は、依頼者の視点から語られる。生活に混じりこむ怪異、それぞれの生活が描かれているからこそ、それがリアリティを持って感じられる。少しずつ日常が侵されていくような恐怖。ホラーとしての堅実な描写から、おぼろげながら浮かびあがってくるルール。

そこで、コンさんの登場だ。
白い鳥居の神社を訪れた依頼者は、霊感のない詐欺師と会うこととなる。
そこからの流れは、スピーディーだ。
まず、原因の究明が速い。さながら、安楽椅子探偵。
ワトソン役となった依頼者は、わけもわからぬまま、その詐術の実際の手口を目の当たりにする。
もちろん、その手口の解説という解決編もある。
我らが名探偵と言いたくなる鮮やかさだ。

リーダビリティの高い文章、魅力的なキャラクター、シリーズとしてもっと読みたくなる安定感のある展開。
しかし、それはあくまで短編としての面白さだ。

幕間に挿入されるブレークポイントによってほのめかされる大きな流れ、それこそが連作を連作たらしめている。
コンさんの過去は、なぜ彼が霊感がないながらに除霊をしているのかにも関わって来て……。

これは間違いなくコンさんの物語だ。
彼の活躍をもっと見たい?
たしかに、その余地のある書きた方にはなっている。
しかし、彼と彼の過去を巡るドラマには区切りがついた。
そこには、ひとつの物語を読み終えた満足感がある。

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