この発想はなかった!「やられたぜ!」そう呟くのは読者か、霊か——?

 除霊師のお話や、幽霊/呪いの類とのバトルのお話が沢山ある中で、全くの異色というか新たな切り口のホラー×ミステリーの名作!

 街で日々起こる不思議な霊障、うつつならざるものたちが起こす不可思議を解決するのは……ビシッとスーツを着こなし、銀色の眼鏡をかけ髪を七三に綺麗に分けた——詐欺師!?
 そう、この主人公、通称:コンさんには霊感というものが全く存在しないのです。さて、ではどうやってこの人の力及ばぬ世界の事象を解決していくのだろうか?

 本編は短編連作という形で進んでいきますが、どの話も日常に溶け込みそうなゾクッとする切り口。そこからコンさんが解決に持っていくまでの様々な手口、語り口がまた素晴らしいのです。

 除霊方法が『詐欺』。
 つまり幽霊を騙すということ。
 物理や術で霊を倒すお話が多い中で、この解決方法にはもう脱帽の一言。
 著者の素晴らしい知識量と文章力がなければ纏められないだろうなという事件の数々を、スッキリとした読後感で収めてくれます。

 ブレークポイントでの「愛してないの?」で謎が深まり……そして事件はコンさんの過去へも繋がっていて——。

「うわー、そうだったのか!」
「ちくしょう、やられたぜ!」

 出会い頭には一癖も二癖もありそうなコンさんの、不器用な優しさに触れながら、きっと騙された幽霊と一緒に笑顔でそう言いたくなるはず。

 この物語に中毒性はありませんよ、ほぉら大丈夫大丈夫。
 なぁんて。ご安心ください、読んでしまえばアナタもきっと虜になっちゃうカモ……。
 とても面白い、オススメの一作です。

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