霊感を持たない除霊師はかく騙りき。迷える魂を『嘘』で救え!

心霊現象に悩まされた人が、とある古ぼけた神社を訪ねると、神主を通じて紹介される一人の男。
『コン』と名乗る、クールで物憂げな雰囲気の彼は、なんと霊感がないのだという。
そんな人が、いったいどうやって除霊をしようというのか?

答えは『詐欺』です。
何かしらのきっかけで生者に執着する亡者を、巧みな話術で騙し、諦めさせる。
この鮮やかな会話劇が非常に痛快で、読みながら何度も舌を巻きました。

ストーリーは短編連作仕立て。
発生した怪異の程度や性質は実にさまざま。原因となった霊を欺くコンさんの『手口』も多岐に渡り、読み手を飽きさせません。

さまざまな困り事に陥った依頼人たちの視点から、コンさんという一人の男の為人が描かれていきます。
最初は冷淡に思えた彼も、本当は心根の優しい人だと分かってきます。
そんな彼が除霊を続けるのは、ある目的のため……

どうしても消せない恨みを雪ぐのは、より鋭く強い恨みなのか。煙に巻いて気を逸らすだけの言の葉なのか。
はたまた、深く柔らかく包み込むような愛なのか。

哀しく、温かく、どこか清々しい読後感でした。
とても面白かったです!

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