雛牡丹を摘む

作者 夢見里 龍

美しく才ある娘の壮絶な生

  • ★★★ Excellent!!!

「それは、病というには美しすぎた。」

この印象的な冒頭の一行から最後まで、徹頭徹尾やわらかで壮絶な美しさに包まれた作品です。
音楽の才能に恵まれた娘・雛牡丹。彼女は身体から枝が生えてくるという奇妙な病を得てしまいます。
畳にころりと落ちた梅の蕾。
それはまだ若い彼女から、芸も命をも奪ってしまう、残酷な病です。しかし、可憐な娘に似合ってもおり、あまりに美しいのです。

驕慢だと人に見られがちな雛牡丹ですが、その胸には年齢の幼さに不釣り合いなほどの矜持を抱いています。その、己自身も「華」と生きようとするさまが、また彼女の容貌や梅の蕾に劣らず美しいのです。
下働きの椿少年が、心酔し、お仕えしようとする気持ちもわかります。
幼いのに、あまりに気高い。

「ああ、僕は、彼女の凄みに惚れたのだと。」

オマージュ元の『春琴抄』の美しさ、関係性の尊さを思い起こさせながらも、こちらの作品にはまた独自のしなやかな美の描写とやさしさがあります。
名作をこれほど心打つ別の作品に仕立て上げる才能に脱帽です。

言葉を尽くすより、とにかく一読して、この世界に浸っていただきたい作品です。
この世界の艶めかしい美しさ、儚くやさしい雰囲気を、言葉で説明するだけの力がありません。ぜひ読んで欲しいです。

とびきり美しい珠玉の短編です。
そして、雛牡丹と椿の関係性がとても尊いのです……。

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★★★ Excellent!!!

夢見里さんのうつくしい文章で紡がれる、才をきわめて芸に散った女性とその側仕えの物語。
美にしろ芸にしろ、その道の神に愛されるということがどんなことか突きつけられるような、凄絶な描写に息を呑みました。… 続きを読む

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